研究課題/領域番号 |
23592406
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
三浦 清徳 長崎大学, 大学院医歯薬学総合研究科, 客員研究員 (00363490)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 遺伝子 / 核酸 / マイクロRNA / 胎児 / 胎盤 |
研究概要 |
1)胎児・胎盤特異的miRNAを網羅的に同定する。:胎盤特異的miRNAとしてhas-518bを含む19q13.42領域のmiRNAが同定され、一方、胎児特異的miRNAとしてhas-miR-496を含む14q32領域(14q32.31もしくは14q32.2)のmiRNAが同定された。2)妊娠経過に伴う胎盤特異的miRNAプロファイリングと発現量の変化:妊娠初期の胎盤特異的miRNAは全て19q13.42領域(C19MC)に存在していた。発現プロファイリングと比較すると、妊娠初期と末期の胎盤特異的miRNAは上位10個のうち9個は一致しており、いずれの胎盤特異的miRNAも妊娠初期から末期にかけて発現量が2倍以上に上昇していた(最小値-最大値:2.05倍-7.26倍)。3)産科疾患における胎児・胎盤特異的miRNA発現パターンの同定:妊娠高血圧症候群(PIH):正常妊婦と比較して、PIH妊婦の血漿中に流入する14q32領域の胎児特異的miRNA流入量は低下し、19q13.42領域の胎盤特異的miRNA流入量は上昇していた(Mann-Whitney U-test, p<0.05)。子宮内胎児発育遅延(IUGR):miR-518b、miR-1323、miR-519dおよびmiR526bの発現レベルは、正常妊娠に比しIUGRの胎盤組織において有意に低下していた(Mann-Whitney U-test, p<0.005)。また、血漿中胎盤特異的miRNA流入量は、分娩後には速やかに低下していた。以上より、母体血中胎児特異的miRNAは主に14q32、一方、胎盤特異的miRNAは19q13.42領域にクラスターを形成して存在していた。また、胎児・胎盤特異的miRNAの流入量は、PIHあるいはIUGRと関連しており、発症予測の分子マーカーとしての可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の研究計画では、胎児・胎盤特異的mRNA/miRNAを網羅的に同定し、正常妊娠と比較して産科疾患に特徴的な胎児・胎盤特異的mRNA/miRNA発現パターンを同定することであった。平成23年度内に次世代高速シークエンスを用いて網羅的にスクリーニングし、胎児特異的miRNA(主に14q32領域)および胎盤特異的miRNA(主に19q13.42領域)を同定し、それらの妊娠高血圧症候群あるいは子宮内胎児発育遅延における発現パターンを同定した。以上より、研究はおおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に得られた結果を基にして、cff-mRNA/miRNAの胎児胎盤機能検査や産科疾患の発症リスク推定への臨床応用の可能性を探る。そこで、平成24年度の具体的な方策として以下の2点を行う。1)妊娠中期-末期のcff-mRNA/miRNA流入量と胎児・胎盤機能不全との関連解析を行う。2)発症前に採血したcff-mRNA/miRNA流入量と産科疾患との関連解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は主にPCR試薬とプラスチックに研究費を使用する予定である。1)定量的TaqMan RT-PCR法により妊娠中期-末期のcff-mRNA/miRNA流入量と臨床所見の異常(CTG異常あるいは超音波ドプラ所見の異常)との関連を解析する。2)妊娠高血圧症候群20例あるいは子宮内胎児発育遅延20例と正常妊娠20例を対象として、疾患を発症する前に採血した血漿中のcff-mRNA/miRNA流入量とその後の発症の有無を明らかにする。
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