研究概要 |
本年度は、以下の検討を行った。 (1)母体血漿中に流入する胎盤特異的mRNA量と双胎間輸血症候群との関連については、一絨毛膜二羊膜双胎28例を対象とした。そのうち、後に双胎間輸血症候群 (TTTS)を発症した11例をTTTS群、TTTSを発症しなかった17例をnon-TTTS群とした。TTTS発症前に採取した母体血漿中の胎盤特異的mRNA (hPL, PSG2, PSG3, Syncytin, Syncytin 2, RAI14, ADAM12, CGA, および CGB) 流入量とその後のTTTS発症の有無について検討した。6種類の胎盤特異的mRNAは、母体血漿中への流入量がnon-TTTS群と比較してTTTS群で有意に変化しており (上昇していたmRNA: hPL, PSG2およびPSG3; 減少していたmRNA: Syncytin, Syncytin2および ADAM12) 、TTTSの発症を推定する分子マーカーと考えられた(Miura K et al. Prenat Diag 2014). (2)母体血漿中へ流入する胎盤特異的microRNA量へ影響する因子については、帝王切開を受けた64例を対象とした。帝王切開時に陣痛が発来していた32例を陣痛群、子宮収縮を認めていなかった32例を非陣痛群とした。両群間における母体血漿中胎盤特異的microRNAs (miR-515-3p, miR-517a, miR-517c, および miR-518b) 流入量を比較して、胎盤特異的microRNA流入量への陣痛の影響の有無について検討した。陣痛群における母体血漿中胎盤特異的microRNAs流入量は、非陣痛群におけるそれと比較して有意に上昇していた(P=0.001 for 515-3p, P=0.002 for 517a, P=0.001 for 517c, および P=0.003 for 518b)。また、陣痛群における分娩後24時間の血中濃度 は、非陣痛群のそれと比較して、有意に上昇していた。したがって、陣痛は、母体血漿中胎盤特異的microRNA流入量を上昇させる因子であり、24時間後の母体血漿中胎盤特異的microRNAの消失を遷延させる要因であることが明らかになった。
|