妊娠高血圧症候群(PIH)ハイリスク妊婦における血管内皮機能低下例を対象とした葉酸+L-アルギンサプリメントの研究では、40才以上、BMI>27、高血圧合併症のある妊婦や前回PIH、初診時の血圧が高いものなどをPIH発症ハイリスク妊婦として、名古屋市立西部医療センターで妊娠初期から分娩まで管理予定の妊婦で、同意を得て行なった。上腕動脈のflow-mediated vasodilatation(%FMD)低値(110以下)を血管内皮機能低下群として、葉酸0.4mg+L-アルギニン1g/日(内服群)を投与した。内服を希望されなかった妊婦をコントロール群とした。投与開始前、開始後に%FMD測定した。今年度は内服群15名、コントロール群7名であった。妊娠高血圧腎症(PE)の予防効果があることが示唆された。 妊婦の抵抗血管を用いたin vitroの研究は現在、この研究を進めることが不可能と判断した。それに変わる研究として、PIHハイリスク妊婦や外来での高血圧(>140/90mmHg)を対象として24時間自由行動下血圧(24h ABPM)を測定し、重症(>160/110mmHg)や昼間と夜間の血圧の優位性を検討した。PE14名、妊娠高血圧(GH)17名、白衣高血圧妊婦9名に24h ABPM測定を行った。PEは重症高血圧、夜間有意高血圧が多く、GHでは軽症高血圧、昼間有意高血圧が多かった。PEとGHでは、血圧上昇の病態が異なり、それに対応した降圧管理が必要と考えられた。 降圧治療を、経口薬ラベタロールおよび注射薬ニカルジピンスライディングスケールを用いて検討した。ラベタロールは、GHの降圧に有用であり、神経症状の改善も認めた。ニカルジピン注射は緊急時に確実に降圧することを明らかにすると共に、20%以上の下降率を示すものも多く認め、十分な血圧監視が必要であることが示唆された。
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