研究概要 |
羊水や胎便は凝固関連物質を含むため、これらの母体血中への流入は出血量の増加に繋がる可能性が示唆される。一方、この重篤な症状出現が羊水塞栓症である可能性も否定できない。そこで、羊水が母体血中に流入した時のマーカーとして母体血中SCC値を、胎便流入マーカーとしてSTNを用いて、分娩時の羊水や胎便の流入により分娩時の出血が増量するか否かを捉えるべく、以下の3項目を検討した。1. 産褥期における血中SCCとSTN値、2. 胎便混濁と清澄羊水分娩時における母体出血量の差、3. 出血量と血中SCCとSTN値の関連性である。結果1. 血中SCC値の平均±標準偏差値は5.3±1.9ng/mlであり、一般の正常閾値である1.5 ng/mlより高値を示した。また、血中STN値の平均±標準偏差値は19.3±7.1ng/mlであり、一般の正常閾値45.0 IU/mlに比して上昇を認めなかった。分娩時に羊水が母体血中に流入する可能性が示唆された。結果2. 羊水混濁時と清澄羊水時の分娩時出血量を以下の2項目において比較すると、1)直後の出血量:混濁453±182ml, 清澄76±324ml(平均出血量±標準偏差)2)総出血量:混濁525±241ml, 3清澄451±335mlであった。Mann-Whitney U-testによると、分娩直後の出血量においてP=0.0381と有意差を認めた。結果3. 出血量500ml以上と未満における、各マーカー1)SCCと2)STN値を比較すると1)500ml以上5.5±2.3 IU/ml, 500ml未満5.1±1.8 IU/ml(平均値±標準偏差)、2)500ml以上17.1±5.0 IU/ml, 500ml未満19.2±8.0 IU/mlであり、Mann-Whitney U-testにおいて両マーカーとも有意差を認めなかった。
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次年度の研究費の使用計画 |
1. 物品費1)母体血中のSCC, STN,C3,C4,FDP-DDを経時的に測定し、羊水や胎便の流入が正常分娩時に起こっているのかを確認する。N=30-40 金額 370,000円2) 凝固活性およびアナフィラキシー様反応関連物質の測定ELISAキットの購入対象:(1)MMP-2/MMP-9/TIMP-1/TIMP-2、(2)MCP-1、(3)IL-1β/IL-6/IL-8/IL-13、(4)IGFBP-1、(5)Midkine、(6)PAPP-A、(7)Tissue Factor, (8)Tissue factor pathway inhibitor (TFPI), (9)過酸化脂質, (10)Prothrombin fragment F1+2, (11)Factor Xa活性, (12)Thromboxane B2 N=4-8 金額870,000円2. 旅費 金額100,000円 3. その他 110,000円 1-3. 合計金額:154,000円
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