研究課題/領域番号 |
23592412
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
梶原 健 埼玉医科大学, 医学部, 准教授 (80286103)
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研究分担者 |
板倉 敦夫 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (70262897)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 子宮内膜脱落膜化 |
研究概要 |
本研究ではこれまでに我々が明らかとした脱落膜化メカニズムの知見を基に、着床不全に対する治療法の確立を目的とし、平成23年度は1.脱落膜化へのヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)の作用2.脱落膜化へのヘパリンの作用とその細胞内シグナルに関してin vitroに研究を行い、以下の知見を得た。1.の研究においては、hCGは現在その由来の違いによりrecombinant-hCG(rhCG)とurinary-hCG(uhCG)の2種類が使用されているが、脱落膜化マーカーである培養上清中のPRL値は脱落膜化刺激によりその濃度は上昇し、uhCGを添加するとさらに上昇したが、rhCGを添加すると逆に抑制された。また酸化ストレスよって誘導されるアポトーシス細胞はrhCGを添加すると減少したが、uhCGを添加すると逆に増加した。Mn-SODの発現は脱落膜化刺激により誘導され、rhCGを添加するとさらにその発現は増強され、uhCGを添加すると逆に抑制されることが明らかとなった。以上の結果よりhCGの由来により脱落膜化細胞に与える影響は異なることが明らかとなった。2.の研究では、脱落膜化刺激により上昇する培養上清中のPRLはヘパリンを添加するとさらに上昇した。また酸化ストレスにより誘導されるアポトーシス細胞は、ヘパリンを添加すると濃度依存性に減少した。FOXO1とMn-SODの発現は脱落膜化刺激により誘導され、高濃度のヘパリンを添加するとさらにその発現は増強した。anti-apoptotic因子のbcl-2の発現もヘパリンの添加により濃度依存性に増強した。以上の研究によりrhCGとヘパリンはヒト子宮内膜間質細胞の脱落膜化を促進し、さらには酸化ストレス抵抗性を高め、その適切な使用が着床率を向上させる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は子宮筋腫などの良性疾患にて摘出した子宮から内膜間質細胞を分離・培養し実験を行っているが、検体採取可能症例が当初の計画より少なく、限られた実験しか行えなかった。しかし、得られた研究実績は当初の予定とほぼ同じであった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降はmicroRNAと脱落膜化機構の関連に注目し以下の研究を行う。脱落膜化を誘導したHESCs(脱落膜化群)と脱落膜化刺激を行っていない群(control群)からmicroRNAの分画を含んだmRNA抽出し、Micro-array解析により両群において発現に差が認められるmiRNAを同定する。発現に差が認められたmiRNAの中で上記のFOXO1の発現を制御している事が予想されるmicroRNAを公開されているdatabaseから選択する。同定されたmicroRNAがFOXO1の発現を制御しているか再確認する目的でmiRNAの過剰発現、過剰発現実験を行い、その事によりFOXO1の発現が変化するかRealtime-PCR、Western blot法にて確認する。続いて体外受精時に良好胚を移植しても反復して妊娠が成立しない着床不全と考えられる症例(着床不全群)の子宮内膜と、妊孕性が確認されている子宮内膜(control群)からmicroRNAの分画を含んだmRNA抽出し。Realtime-PCR法により同定されたmiRNAの発現に両群で差が認められるか検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記研究を遂行するためMicroarray Gene Chip購入に50万円、他の実験器具を購入するため40万円、学会発表等のための旅費として30万円、論文の別刷り代として20万円を使用する予定である。
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