研究課題/領域番号 |
23592413
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
井上 治 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (10464976)
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研究分担者 |
浜谷 敏生 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (60265882)
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キーワード | CD9 / 子宮内腔 / 子宮内膜 / 液性因子 / MMP / 不妊症 / 着床不全 / 炎症 |
研究概要 |
本研究では、着床期に子宮内腔に存在する液性因子に注目して、子宮の着床能評価および着床不全メカニズムの解明を試みた。 これまでに、ヒト子宮内腔洗浄液中のMMP2、 MMP9の濃度・活性が子宮内膜炎のマーカーとして有用であることが明らかとなっている。そこで、MMP活性の高い症例に対して抗生剤とプレドニゾロンを投与し、MMP活性の低下(消炎効果)がその後の胚移植における妊娠率と相関するか検討した。 次に、CD9について検討した。免疫組織化学により、マウス子宮内膜におけるCD9 の発現パターンを明らかにし、子宮内腔洗浄液を用いたウェスタンブロットでは、マウスおよびヒトで着床期の子宮内腔にCD9 が存在することが明らかとなった。ヒト子宮内腔洗浄液中のCD9陽性率を検討したところ、不妊初診患者(コントロール)(56例)と反復着床不全例(70例)を比較すると、反復着床不全例で有意に減少していた。また、不妊初診時にCD9陽性(29例)の方が陰性(27例)に比べて、その後妊娠する率が高い傾向が認められた。一方、子宮内容掻爬術の既往がある症例(25例)でも、無い例(34例)に比べて、有意に減少していた。さらに、内膜菲薄例(15例)でも、内膜正常例(51例)に比べて、有意に減少を認めた。以上の結果から、子宮内腔におけるCD9の存在が着床あるいは妊娠率に重要な役割があることが示唆された。 一方、CD9ノックアウトマウス(♀)との交配では、2回目以降の妊娠で産仔数が有意に減少することが明らかとなった。マウスモデルを用いて、着床および着床周辺期胚発生において子宮内膜および子宮内腔のCD9とVEGFが果たす役割について検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究結果から、ヒトおよびマウスの着床あるいは着床周辺期胚発生に、子宮内腔におけるCD9の存在が重要であることが示唆されており、有意義な研究成果が得られつつある。 また、ヒト子宮内腔洗浄液中のMMP2/MMP9は、実際に臨床の場で、子宮内膜炎のマーカーとして有用であり、治療評価にも応用が可能であることが明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
ヒト子宮内腔洗浄液中のCD9陽性率について、さらに症例数を増やして検討する。 また、マウス子宮におけるCD9の発現を詳細に検討し、CD9ノックアウトマウスを用いて、2回目以降の妊娠において、子宮内膜および子宮内腔のCD9の意義について、特にVEGFとの関連に注目して検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
マウス、CD9ノックアウトマウスの購入 液性因子の測定 学会参加等を予定している。
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