研究課題/領域番号 |
23592417
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
関沢 明彦 昭和大学, 医学部, 教授 (10245839)
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研究分担者 |
四元 淳子 昭和大学, 医学部, 特別研究生 (30553648)
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キーワード | 妊娠高血圧症候群 / 胎盤形成期 / 抗血管増殖因子 / FLT-1 |
研究概要 |
妊娠高血圧症候群の病態が妊娠初期の胎盤形成期にあることはよく知られている。一方、妊娠中の喫煙に妊娠高血圧症候群の発症率低減効果あることはよく知られている。今年度、妊娠初期絨毛を用いて喫煙が血管増殖関連因子や抗酸化因子の遺伝子発現に及ぼす影響について検討を行った。具体的には、まず、非喫煙妊婦で妊娠初期に胎児心拍を認めた後に人工妊娠中絶を行った妊婦から絨毛組織を採取し、その遺伝子発現を定量し、妊娠経過に伴う変化と比較した。その結果、抗血管増殖因子であるFlt-1やENGはその発現量が増加する傾向を認めた。その上で、喫煙者と非喫煙者の識別のため、血中コチニン濃度を測定し、検出する妊婦を喫煙群、検出しない群を非喫煙群として比較したところ、妊娠10-11週の妊婦末梢血中cell-free RNA発現では、VEGFA発現が喫煙群で有意な高値を、また、PlGF発現は高値傾向を示した。Flt-1やENGには変化を認めなかった。同様に、妊娠6-8週での検討でも有意な変化を示す遺伝子はなかった。この結果は、喫煙により絨毛のVEGFA発現が亢進し、絨毛浸潤や血管形成に促進的に働くことが、妊娠高血圧症候群の発症に抑制的効果を示すメカニズムであることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究成果が確実に出ている。発症予知に向けた血液検体採取のプロスペクティブな検討の準備は、日本人での妊娠初期の血液採取は1600例(妊婦数;検体数3800)以上になっている。現在、採血した妊婦の予後の調査を行っており、その結果を踏まえ、次年度の測定を開始したい。
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今後の研究の推進方策 |
日本人の妊婦1600人から、妊娠初期、中期、後期、分娩時、産じょく期の採血を行い、検体採取を行っており、日本人の検体採取は、ほぼ終了している。妊婦の予後の調査の結果を待って、検体測定を行い、妊娠高血圧症候群発症予知の精度を明らかにしたい。解析する遺伝子は、血管増殖因子関連遺伝子、抗酸化関連遺伝子などである。
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次年度の研究費の使用計画 |
日本人の妊婦1600人から、妊娠初期、中期、後期、分娩時、産じょく期の採血を行い、検体採取を行っている。妊娠予後の確認を行ったのち、このサンプルのcell-free RNA解析を行い、発症予知の可能性を日本人で確認する予定である。検体数が多いため、RNA抽出キットやPCR試薬などに多くの出費を予定している。また、研究成果を世界出生前診断会議で発表予定しており、関連分野の研究者との意見交換を含め、海外出張を予定している。
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