研究概要 |
胎盤絨毛は、基本的にHIVへの感受性が低く、不完全ながら胎盤関門が存在する。しかし、絨毛細胞の分化や解剖学的構造とHIV感受性の関係には不明な点が多い。我々は、不死化初期絨毛細胞株Swan71(Sw71)を、浸潤性の高いinvasivetrophoblastのモデルとして使用し、CD4非依存性のHIV感染機構について検討した。 その結果、FlowcytometryとRT-PCRにより、Sw71がCD4を発現せず、ケモカインレセプターCXCR4、CCR5、DC-SIGNおよびmannose receptorの発現は極めて低いことを明らかにした。次に、Sw71を24we11プレートで培養、HIV-LAI(CXCR4指向性)ウイルスに2時間感染させ、PBSで洗浄後、新しい培地中で2~3日培養した。上清中のp24量をELISAで測定したところ、感染ウイルス量5ng(p24換算量)の際に30pgとごく少量であった。しかし、感染細胞中のゲノムDNAに取り込まれたプロウイルス量は30,000コピーに達し、ウイルス量を増減すると、感染ウイルス量に依存したプロウイルス量が検出された。この系は、CXCR4アンタゴニスト処理によって抑制されず、HIV感染へのCXCR4の関与は少ないと考えられた。 臨床的には、血中HIV量が多いと妊娠高血圧症候群のリスクが高まることから、過剰なウイルスが存在すると、母体血に直接接触する浸潤性の絨毛細胞にCD4、CXCR4非依存性の感染が生じ、大量のプロウイルスの組み込みが生じた絨毛細胞の機能障害から母体の血管構築改変が阻害されて、妊娠高血圧症候群のリスクが高まる可能性が示唆された。
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