研究課題/領域番号 |
23592419
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
石橋 宰 日本医科大学, 医学部, 講師 (70293214)
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研究分担者 |
瀧澤 俊広 日本医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90271220)
竹下 俊行 日本医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60188175)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | マイクロRNA / 妊娠高血圧症候群 / 蛋白尿 / ポドサイト / エンドセリン |
研究概要 |
妊娠高血圧症候群(pregnancy-induced hypertension; PIH)は高血圧を主体とする原因不明の妊娠合併症であり、多くの場合蛋白尿を伴う。その管理は一般的に血圧コントロールに主眼が置かれ行われており、蛋白尿に関しては通常積極的な治療は行われていない。PIHに伴う蛋白尿は出産後もしばらく持続すること、および蛋白尿自体が腎機能低下を増悪させることが示唆されており、その管理や治療は今後の重要課題であると考えらるが、PIHにおける蛋白尿出現メカニズムに関する研究はきわめて少ない。最近の研究により、腎糸球体ポドサイトが正常に機能するために、低分子の機能性非コードRNAであるマイクロRNA(miRNA)の存在が不可欠であることが示された。ただし、具体的にどのmiRNAがその機能を担っているかという点に関しては不明である。そこで本研究では、「PIHに伴い上昇するエンドセリン等の血管内皮由来因子が、ポドサイトにおけるmiRNAの発現を制御し、それらが標的とする血漿濾過関連蛋白質の発現に影響を与えることにより蛋白尿が出現する」という仮説を立て、その検証を進めた。本研究は、(1)ポドサイトにおいて、エンドセリン1(ET-1)による発現制御を受けるmiRNAと血漿濾過関連遺伝子の同定、(2)それらの発現変動の関連性の検討(in vitro解析)、(3)PEモデルマウスのポドサイトにおける、(1)で同定されたmiRNAと遺伝子の発現変動の検証(in vivo解析)、から構成されるが、当該年度は、(1)の実験を遂行中の段階にある。具体的には、アレイシステムを用いた網羅的解析により、発現変動を認めるmiRNAと遺伝子の同定を試みている。なお、当初miRNAの解析にはPCRアレイシステムを用いる予定であったが、チップを用いるmiRNAアレイの精度が格段に上がり簡便なことから、後者を用いることにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究においてヒトのポドサイトが利用できれば理想であるが、その入手は現実的には困難である。一方、動物のポドサイトの初代培養に関する報告は存在するが、種々の分子細胞生物学的実験に供する程度にまで増殖させることは極めて厳しいと言わざるを得ない。そこで本研究課題では、世界的に広く用いられているマウス由来ポドサイト細胞株MPC5を用いる計画であったが、本細胞の分譲について樹立者との交渉や手続きに想定外の困難が生じた。現在、引き続き交渉を続けている。なお、MPC5細胞が入手できない事態を想定し、我々はCell Line Service社(ドイツ)から販売されているマウス由来不死化ポドサイト細胞株を購入することも検討している。培養した本細胞から全RNAを抽出し、上述のようにmiRNAアレイおよび遺伝子アレイ解析に供することが可能であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
上述のように、現状で研究計画に若干の遅れは生じているが、細胞が入手できれば、アレイによるmiRNA発現および遺伝子発現の解析のための準備はすでに整っており、可及的速やかに遅れを取り戻す予定である。したがって、次年度の基本的な研究計画に大きな変更は生じない。細かな変更点としては、上述の細胞入手の経緯もあり、当初のMPC5細胞に加え、他のポドサイト細胞株も合わせて解析することも計画している。一般論として細胞株に関しては本来の性質を完全に保持することはほぼ不可能であるがゆえ、複数の細胞株を用いて解析できれば解析結果の信頼性が増すことが期待され、この計画変更により、むしろ研究が良い方向に進むと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
代表研究者は次年度より所属が変更となるが、本研究課題を遂行するために必要となる機器類については整備されているため、次年度において機器類の購入予定はない。したがって、次年度の予算の大部分は消耗品購入に充てる予定である。その内訳としては、ポドサイトにおけるmiRNAおよび遺伝子の発現解析(アレイ解析およびその結果の検証)に約50%、細胞培養用器具および試薬類(エンドセリン等の添加因子を含む)に約40%、その他汎用試薬類に約10%と見積もっている。また、次年度には、アレイによる遺伝子発現解析の結果について学会発表を行う予定であり、そのための旅費として約8万円を計上する予定である。
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