研究課題/領域番号 |
23592419
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
石橋 宰 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 准教授 (70293214)
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研究分担者 |
瀧澤 俊広 日本医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90271220)
竹下 俊行 日本医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60188175)
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キーワード | 妊娠高血圧症候群 / 胎盤 / 蛋白尿 / ポドサイト / マイクロRNA / マイクロアレイ |
研究概要 |
本研究では、妊娠高血圧症候群(pregnancy-induced hypertension; 以下PIH)に伴う蛋白尿発症メカニズムの解明の一環として、血中蛋白質の最終的濾過障壁として機能する腎糸球体ポドサイトにおけるマイクロRNA(miRNA)に着目している。最近の研究により、ポドサイトの機能維持に低分子非コードRNAであるmiRNAの存在が必須であることが示されたが、具体的にどのmiRNAがその機能を担っているかという点に関しては不明である。そこで本年度は、「PIHに伴い上昇する胎盤由来エンドセリンが、ポドサイトにおけるmiRNAの発現を制御し、それらが標的とする血漿濾過関連蛋白質の発現に影響を与えることにより蛋白尿が出現する」という仮説を基に、ポドサイトをエンドセリンで処理した際に発現制御を受けるmiRNAと遺伝子の網羅的解析を目標とした。当初は、実験材料として過去に樹立されたポドサイト様細胞株を用いる予定であったが、入手可能であった不死化マウスポドサイト株E11については、培養中にポドサイト特異的マーカー(podocin、nephrin等)の発現が急速に消失し、本細胞の形質が保持されていないと判断された。そこで、材料として、Katsuyaらの方法(Kidney Int. 69, 2101-6; 2006)に基づき分離したラットの初代培養ポドサイトを用いることにした。本法で得られた細胞からRNAを抽出し、ポドサイト特異的マーカーの遺伝子発現をリアルタイムPCRで解析したところ、いずれについても十分な発現が確認された。以上より、本細胞はポドサイトの特徴を十分に持ち合わせており、本研究に供する実験材料として適していると考えられる。現在、アレイによるmiRNA発現および遺伝子発現に必要な量のRNAを得るために、細胞分離・培養を繰り返し行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、当初、世界的に広く用いられているマウス由来ポドサイト細胞株MPC5を用いる計画であったが、昨年度に引き続き本細胞の分譲について樹立者を含む様々な研究者と交渉を行ったものの、良い反応は得られなかった。そこで、Cell Line Service社(ドイツ)から販売されているマウス由来不死化ポドサイト細胞株を購入したが、本細胞は培養中にポドサイトマーカーの発現が急速に失われ、様々な培養条件を試みたものの、改善は認められなかった。そこで、新潟大学腎研究施設の矢尾板永信博士の協力を得て、Wistarラット腎臓由来ポドサイトの初代培養法を試みたところ、比較的安定してポドサイトを得ることが可能になり、本細胞からのRNAの抽出にも全く問題は生じていない。以上の理由で、本研究に関して昨年までの遅れはほぼ取り戻し、現状では概ね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後、ポドサイトにエンドセリン(ET-1)を作用させた際に発現が変動するmiRNAについて、網羅的な解析を実施する予定である。この際、当初の研究計画においては、Life Technologies社のPCRベースのアレイを用いる予定であったが、最近はmiRNA用マイクロアレイの精度が飛躍的に上昇し、さらに少量のRNAで解析が可能であるという利点を有することから、こちらを用いることにした。具体的には、Exiqon社のLNA miRNAアレイの使用を検討している。なお、解析に際しては、ET-1の濃度についてコントロール(ET-1非添加)を含め4条件、処理時間についてコントロール(ET-1添加前(非添加))を含め4条件で試料を回収し、合計7試料について比較解析を実施する。 上記の解析で同定されたmiRNAについて、バイオインフォマティクス解析によりそれらの標的遺伝子候補を予測する。それらの遺伝子について、ルシフェラーゼアッセイや、miRNA過剰発現・機能抑制後の遺伝子発現解析(リアルタイムRT-PCR、ウェスタンブロッティングなど)により、真の標的か否かを検証する。 さらに、発現変動miRNAの標的が実験的に証明された際には、in vivo研究として、以前に確立されたPIHモデルマウスを用い、当該miRNAの制御による蛋白尿治療の可能性の検討を実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験材料として、ラットの初代培養ポドサイトを使用することにしたため、実験動物(Wistarラット)およびその飼料、および培養関連試薬(培地、血清、添加物)などに充てる予定である。さらに一部は、マイクロアレイを用いた網羅的miRNA発現解析にも使用する。
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