研究課題/領域番号 |
23592421
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研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
鈴木 直 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (90246356)
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研究分担者 |
石塚 文平 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (80097336)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 卵巣組織凍結 / ガラス化法 / 若年女性がん患者 |
研究概要 |
新たな卵巣組織凍結方法の開発(デバイスの改良)2004年にベルギーのDonnezらは、25歳のホジキン病患者から、化学療法施行前に卵巣皮質の一部を緩慢凍結法によって凍結保存し、完全寛解後、卵巣の血管近傍の腹膜と右卵管采近傍の腹膜に凍結卵巣組織を融解し自家移植した結果、移植11ヶ月後に自然妊娠が成立し世界で初めてヒトでの生児獲得に成功している。現在、本技術によって19名の生児が得られており、欧州においては卵巣組織凍結・自家移植は既に臨床応用されるべき一般的な技術の一つであると認識されている。しかし、本技術による生児獲得率は低く改良すべき問題は依然山積していることから、安全で成功率の高い卵巣組織凍結・移植法を確立するために、動物実験による基礎的研究データの集積が依然必要である。我々はこれまでに独自に卵巣組織凍結デバイスを作成することで新たなガラス化法の開発に成功している。大網、卵管間膜、後腹膜などにガラス化凍結法にて凍結した卵巣組織を融解後移植した結果、質の高い胚の採取に成功し、顕微授精によって受精卵の獲得に成功している。しかし、よりクオリティーの高い卵巣組織凍結を志向した凍結デバイスの開発は、若年女性がん患者の妊孕性温存のためにも重要な意義を有すると考える。一方、高分子フィルムを原料としたグラファイトシートは、アルミニウムの約8倍、銅の約2-4倍の熱伝導率を有する素材であることが知られている。そこでグラファイトシートを原料とした新たなデバイスを開発することによって、より熱伝導率が高くなることから、卵巣組織の冷却速度や加温速度の更なる上昇が見込まれ、その結果より効率の高い新たな卵巣組織凍結方法を開発することが出来る可能性が見込まれる。そこで、平成23年度はグラファイトシートを原料とした新たなデバイスを開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の目標である新たなガラス化凍結法デバイス(グラファイトシートデバイス)の開発に成功したことから、おおむね順調に進展しているものと判断している。現在、3頭のカニクイザルの卵巣組織を本デバイスにて凍結を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
現在、3頭のカニクイザルの卵巣組織を本デバイスにて凍結を行っており、本年度はこの凍結卵巣を融解し、予定通り電子顕微鏡を用いた微細構造の観察を行う方針である。そして、これまで我々が開発したガラス化法ならびに既存の緩慢凍結法による微細構造と比較検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度はおおむね予定通りに研究を進めることができたが少々予算より支出が少なく残額が発生している。余った額に関しては、平成24年度以降に使用する予定である。また、平成24年度以降は、グラファイトシートデバイスを用いた卵巣組織凍結方法の確立に関する研究の継続と、卵巣組織移植の評価法の開発を行う。より侵襲の少ない評価法を開発する目的で、超音波造影剤( ソナゾイド、第一三共株式会社)を用いた超音波画像診断を導入する。具体的には造影CTと超音波造影剤による超音波画像診断を駆使して、卵巣組織の評価法の開発を試みる。
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