研究課題
平成25年度内に、新たな閉鎖型卵巣組織凍結用デバイスを作成した。閉鎖型デバイスは、液体窒素への直接接触を排除でき、保管時の感染コンタミネーションを排除できることから、十分に安全性に留意したデバイスとなり得る。しかしながら有効性に関する検証が必要である。そこで、胚凍結用の閉鎖型デバイスとして既に販売されているデバイス(ビトロライフ社)を用いて、卵巣組織凍結への応用を検討した。具体的には、齧歯類の卵巣を対象に本デバイスを用いて凍結・融解・移植実験を行った。対照群として、従来型のデバイス(我々が開発したtype Mデバイス)と液体窒素への直接凍結群とした。耐凍剤は我々の開発した溶液とキットの溶液を用いた。なお、卵巣組織片のHE染色ならびに電子顕微鏡下での細胞微細構造の検討、ならびにホルモン周期の回復を凍結の評価項目とした。その結果、本デバイスを用いた卵巣組織凍結に成功した。しかしながら、本デバイスは胚凍結用であることから、ヒトへの応用に際してはデバイスの大きさに工夫を要する。そこで我々は、新たな閉鎖型卵巣組織凍結用デバイスの開発を目指して、家畜卵巣組織を用いて検討した結果、閉鎖型卵巣組織凍結用デバイスによるガラス化に成功した。さらなる今後の課題は、本年度開発した新しい閉鎖型卵巣組織凍結用デバイスをより簡単な仕様に改変する点である。現在、改変したデバイスの開発(具体的には、卵巣組織を載せるグラファイトシートから他の材質に変更することや、キャップをより簡便な材質に変更すること)に着手している。以上より、「効率の良い卵巣組織凍結・移植法の確立を目指した研究」を遂行する中で、最終的にはより安全性に配慮したデバイスの開発がその実績となった。一方、より侵襲の少ない評価法を開発する為の超音波造影剤を用いた超音波画像診断導入実験に関しては、研究期間内に具体的な成果を得ることができなかった。
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Journal of Reproduction and Development
巻: 59(5) ページ: 496-499