研究課題/領域番号 |
23592424
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研究機関 | 愛知医科大学 |
研究代表者 |
孫田 信一 愛知医科大学, 公私立大学の部局等, 客員研究員 (00100165)
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研究分担者 |
黒川 景 愛知医科大学, 医学部, 講師 (90399030)
佐賀 信介 愛知医科大学, 医学部, 教授 (40144141)
若槻 明彦 愛知医科大学, 医学部, 教授 (90191717)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 出生前染色体検査 / 非侵襲性検査 |
研究概要 |
従来の出生前診断において羊水穿刺や絨毛採取(CVS)法などの検査手技による感染や流産のリスクがかなり高い。したがって、それに代わる新しい非侵襲性検査法の開発は極めて重要である。妊娠10週前後の妊婦の母体血中におよそ血球10万個に1個程度の割合で胎児細胞が存在するとされている。そこで、本研究の目的はその胎児細胞の特性を利用した効率的な方法で胎児細胞を濃縮し、最終的に胎児細胞を分離する方法の確立を目指すことである。この方法が樹立されると、母体血から非侵襲的に得られた胎児細胞によって、重篤な遺伝性疾患等の出生前診断が可能になり、その意義は極めて大きい。 母体血球と異なる胎児細胞の特性とは、胎児有核赤血球nRBCと他の血球細胞間の比重差、有核でヘモグロビンを多量に含む特徴的な細胞形態、胎児細胞膜特異抗原、胎児nRBCに特異なmRNAの発現などである。本年度から妊娠初期の女性から母体血の提供を受けて実験に着手した。提供を受けた血液から定法によりまず赤血球を分離除去した。次に厳密な密度勾配液を用いた遠沈分離法による胎児細胞の濃縮、胎児細胞膜特異抗体を塗布した特殊な培養チャンバーによる胎児細胞の吸着、FACSを用いた分離法などで胎児細胞の分離を目指した。そして、これらの方法で得た細胞をスライドガラス上に伸展し、胎児nRBCに特異なmRNA probeなどを用いたin situ hybridization(FISH)法で胎児細胞の特定を図った。また、これらの分離細胞で、特定遺伝子および染色体のDNAをprobeにしたFISH法で胎児細胞の遺伝子・染色体情報を取得して診断法の確立を目指して取り組み、本年度は一定の成果を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
母体血球と異なる胎児細胞の特性を利用した分離法、胎児細胞特異抗体を塗布した特殊なチャンバーによる細胞吸着、FACSを用いた分離法等で胎児細胞の分離を図った。(1)まず、妊娠母体血中から胎児細胞の分離法を開発するために、十分なインフォームドコンセントを得て協力の得られた妊娠初期(妊娠8~12週)の女性12人から末梢血各10mlの提供を受けて研究に当てた。当初の計画では各年度20人ずつから提供を受ける予定であったが、提供者が十分に得られなかった。本年度、母体血中に含まれる胎児性有核赤血球(nRBC)の分離を目指した。細胞膜抗原や胎児細胞の特性をできる限り温存する方法で血球の分離を試みた。(2)胎児nRBCは成人の白血球などに比べて微妙に細胞比重が異なるので、胎児nRBCの比重に合わせ厳密に調整した特殊な密度勾配の分離液の開発を目指した。まだ母体由来の血球の混入は多いが、その中でも最も回収率の高いと思われる分離液の組成を確認した。(3)胎児細胞により特異的な細胞膜抗体を表面に塗布した胎児細胞分離用・特殊培養チャンバーに(2)で得た胎児細胞リッチな液を入れて、チャンバー膜に胎児細胞を付着させ、チャンバー内の母体血球を洗浄して胎児細胞を回収する方法を検討した。(4)上記(2)で胎児細胞を高濃度に濃縮した液を用いて、蛍光色素で標識した胎児細胞特異的な膜抗体を細胞に吸着させ、それを指標にしてFACSを用いて胎児nRBCの分離法の検討を行った。(5)これらの方法で得た細胞をスライドガラス上に伸展し、CEP-Y probeなどを用いたFISH法でXY細胞の有無を確認した。これまで4検体由来の細胞標本において、Yシグナルが確認され、胎児由来の有核赤血球であることが確かめられた。今後さらにより効率的な回収方法を目指していく。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の研究計画方法を継続し、より効率的な胎児細胞濃縮・分離方法の改良を図る。平成24、25年度も妊娠母体血中から胎児細胞の分離法を開発するために、十分なインフォームドコンセントを得て協力の得られる妊娠初期(妊娠8~12週)の女性(各年度20人)からそれぞれ10mlの末梢血の提供を受けて研究に当てる(研究分担者、若槻が実施)。有核赤血球(nRBC)及び胎児性トロフォブラストについてより有効な分離法を検討する。特に胎児細胞特異的な抗体を塗布したチャンバーに胎児細胞リッチな液を入れて胎児細胞を付着させて回収する。既知の抗体のほか、胎児細胞に特異性を有するナノ抗体を用いて吸着分離を試みる(主に孫田が実施する)。また、同様の抗体を蛍光色素で標識し、胎児細胞に抗体を吸着させ、FACSを用いて分離を試みる(黒川が担当)。これらの方法で分離した細胞をスライドグラス上に伸展固定し、形態学的特性を指標にして顕微鏡下で胎児nRBCを特定する(研究分担者の佐賀が実施)。胎児細胞を含むスライドグラス標本を用いて、蛍光色素で標識した胎児細胞膜特異抗体をprobeに用いてin situ hybridization (FISH)法で胎児細胞の特定を図る。また、蛍光標識した胎児nRBC特異的mRNAをprobeにして同様にFISH法で解析し、胎児細胞を特定する。さらに、分離特定した胎児細胞について、各種のprobe(No.13、18、21、X、およびY染色体などを標識するDNA probe、特定染色体の末端領域を識別するテロメアDNA(TEL)probe、及び動原体近傍領域を標識するCEP probeなど)を用いたFISH法で胎児細胞の染色体構成を確認する(主に孫田が実施する)。以上の方法を吟味して胎児細胞分離技術を完成する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の直接研究費は、平成24年度交付申請額130万円と平成23年度からの繰越額約65万円を合わせると約195万円である。これらの使用計画は以下のとおりである。平成24年度も継続して実施するより効率的な胎児細胞濃縮方法・胎児細胞分離方法の開発改良(血液の遠心分離による胎児細胞の濃縮分離技術、胎児細胞を吸着させるチャンバーの作成等)に、30万円の消耗品費を使用する。胎児細胞に特異的な抗体の購入(既知の抗体の中でより高度の胎児nRBC特異性を有する抗体のほか、胎児nRBCに特異性を有する複数のナノ抗体など)に55万円の消耗品費を充てる。FACSによる胎児細胞の分離技術の検討に消耗品費30万円を充てる。胎児細胞の特定のために、FISH法のprobe等(染色体13、18、21、X、およびYなどを含む各染色体の特定部位を標識するDNA probe、特定染色体の末端領域を識別するテロメアDNA(TEL)、及び動原体近傍領域を標識するCEP probeなど)の購入に消耗品費約40万円を充当する。また、本研究に関連する最新情報の収集を目的に米国人類遺伝学会等の参加費として旅費30万円を充当する予定である。
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