研究課題/領域番号 |
23592426
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
神崎 秀陽 関西医科大学, 医学部, 教授 (80135566)
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キーワード | 生殖医学 / 子宮内膜 / 血管新生因子 / 低酸素 |
研究概要 |
月経周期の過程において子宮内膜機能調節の要となるのは血管新生であり、これを制御する血管新生因子の調節機構や役割を解明する必要がある。血管新生因子として血管新生の中心的な役割を担っている血管内皮細胞増殖因子(VEGF)がある。さらに血管新生因子のひとつでケモカインであるStromal cell-derived factor 1 (SDF-1)が知られている。SDF-1は、臓器特異的な血管形成に必須であり、VEGFと共に血管内皮前駆細胞を動員して血管形成を促している。ヒト子宮内膜において低酸素刺激によるVEGF、SDF-1の遺伝子発現および分泌能の変化を明らかとすることを目的とした。研究材料は、患者の同意のもとに子宮内膜組織を採取し酵素的に融解して、分子生物学的機能解析のためにヒト子宮内膜間質細胞の分離培養を行った。間質細胞を異なる酸素条件下(低酸素の2%、通常酸素の20%)で48時間培養した後に、細胞からRNAを抽出・精製し、cDNAを作成してリアルタイムPCR法を行った。低酸素刺激は、VEGF mRNA発現を誘導したが、SDF-1 mRNA発現を抑制することが判明した。さらに低酸素状態を模倣する塩化コバルト、低酸素誘導因子(hypoxia inducible factor; HIF)-1α結合阻害薬であるエキノマイシンを添加培養して検討した。塩化コバルトの添加培養により、濃度依存的に間質細胞からのVEGF産生が亢進し、SDF-1産生が低下した。これらの結果は、前述した低酸素環境と同様の結果であることが確認できた。塩化コバルトにより誘導されたVEGF増加は、エキノマイシンで著明に抑制された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト子宮内膜で低酸素刺激によるVEGF、SDF-1の遺伝子発現および分泌能の変化を明らかとすることを目的としている。低酸素刺激や塩化コバルト添加培養により、VEGF mRNA発現は誘導されたが、SDF-1発現は抑制されたという知見を得ている。さらにこれらの制御に低酸素誘導因子HIF-1αが関与していることも確認しつつあり、計画は順調に進んでいると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
VEGFの転写を促進する蛋白で転写因子として知られているHIFαの発現変化を同定し、その阻害剤による血管新生因子の分泌能への影響を検討する。さらに、血管新生因子が性ステロイドホルモンにより調節されるのかを解明する。性ステロイドホルモン作用と低酸素刺激による相互作用を検討する。さらに転写制御に関わる因子を同定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度の実験を継続しつつ、低酸素環境で間質細胞からVEGF分泌が誘導されることが判明したため、VEGFの転写を促進する蛋白で転写因子として知られているHIFαの発現変化を明らかにする。低酸素環境で培養された間質細胞から蛋白を抽出して、HIFαのモノクローナル抗体を用いてウエスタンブロット法にて発現するHIFαのバンドを確認する。VEGF産生への性ステロイドホルモン作用と低酸素刺激の相互作用についてはまだ不明であるために、低酸素環境で性ステロイドホルモン添加培養による血管新生因子の分泌能の変化をELISA法にて明らかとする。
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