研究課題/領域番号 |
23592428
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
金内 優典 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任准教授 (60333613)
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研究分担者 |
櫻木 範明 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70153963)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 上皮性卵巣癌 / マイクロRNA / 漿液性腺癌 / 明細胞腺癌 |
研究概要 |
本年度は卵巣癌細胞株あるいは卵巣癌組織を用いて,上皮性卵巣癌の発症や組織型別特性の差異にかかわると考えられるmiRNAを網羅的に検索している.上皮性卵巣癌の中でも近年明細胞腺癌の頻度が増加しており,抗癌剤耐性を示す本腫瘍の本態を検討することは,本研究の目的にもかなっている.子宮内膜症性嚢胞を母地として発生した卵巣明細胞腺癌の良性子宮内膜症性嚢胞成分と明細胞腺癌成分組織でのmiRNAの発現を比較したところ,miRNA-141,200a,200c,345の発現が癌組織で1000倍以上亢進,反対にmiRNA-29c,98,100,222,497の発現は100分の1以下に低下していることが見出された.良性子宮内膜症性嚢胞成分と漿液性腺癌組織での発現を比較するとmiRNA-141,200a,200b,200c,422bの発現が癌組織で100倍以上亢進し,反対にmiRNA-451の発現は100分の1以下に低下していた.またmiRNA-451の発現は明細胞腺癌では亢進しており,漿液性腺癌とは異なっていた.良性子宮内膜症性嚢胞成分で発現が認められないが,卵巣癌細胞株(OVCAR-3,SKOV-3,ES-2,PA-1)においてはmiRNA20bの発現が亢進していた.一方miRNA-143,145,451の発現は良性子宮内膜症性嚢胞成分では亢進していたが,卵巣癌細胞株(OVCAR-3,SKOV-3,ES-2,PA-1)では発現が認められなかった.細胞株間の発現を検討すると,miR-30cの発現は上記3細胞株のうちOVCAR-3でのみに認められた.miR-99aはSKOV-3とES-2に,miR-130aはSKOV-3とPA-1に,miR-141はOVCAR-3のみに発現が認めらた.上皮性卵巣癌発生や組織型的特性の差異の原因と考えられうる種々のmiRNA候補が確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
卵巣癌細胞株および卵巣癌組織での検討により,当初想定してた研究対象以外のmiRNA発現の差異も確認されたため,向後の研究対象のmiRNAの絞り込みが可能となった.特に卵巣癌細胞株での検討を進めることができ,安定した結果をもとめる研究が可能となった.
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今後の研究の推進方策 |
使用する卵巣癌細胞株を4種(OVCAR-3,SKOV-3,ES-2,PA-1)とし,発現の差異の認められたmiRNAの導入あるいはノックアウト実験を行い,細胞増殖能,浸潤能,抗癌剤感受性などに与える影響について検討を進める.卵巣癌組織においては,おもに漿液性腺癌と明細胞腺癌を対象にmiRNA発現の検討を進める.卵巣癌組織での臨床的態度の差異の原因となるmiRNAが同定されれば,卵巣癌細胞株での検討との整合性を検討していく.最終的には卵巣癌発生、あるいは組織型別臨床的態度の差異の原因となるmiRNAの役割を明らかにしたい.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度は従前より保持していた試薬を主に用いたため,PCR器機のみの購入とした.平成24年度には,試薬類の新規購入が必要となる.
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