研究課題/領域番号 |
23592428
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
金内 優典 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任准教授 (60333613)
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研究分担者 |
櫻木 範明 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70153963)
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キーワード | マイクロRNA / 婦人科癌 |
研究概要 |
良性子宮内膜症性嚢胞成分と明細胞腺癌成分組織でのmiRNAの発現を比較したところ,miRNA-141,200a,200c,345の発現が癌組織で1000倍以上亢進,反対にmiRNA-29c,98,100,222,497の発現は100分の1以下に低下していることが見出された.良性子宮内膜症性嚢胞成分と漿液性腺癌成分での発現を比較するとmiRNA-141,200a,200b,200c,422bの発現が癌組織で100倍以上亢進し,反対にmiRNA-451の発現は100分の1以下に低下していた.またmiRNA-451の発現は明細胞腺癌では亢進しており,漿液性腺癌とは異なっていた.卵巣癌細胞株(OVCAR-3,SKOV-3,ES-2,PA-1)間で発現を検討すると,miR-30cの発現はOVCAR-3でのみに認められた.miR-99aはSKOV-3とES-2に発現,miR-130aはSKOV-3とPA-1に発現,miR-141はOVCAR-3のみに発現が認めら、上皮性卵巣癌発生や組織学的特性の差異の原因と考えられうる種々のmiRNA候補が確認された.研究内容を婦人科悪性腫瘍全般の発癌の関する普遍性を確認するために、正常絨毛由来細胞株(HTR)と絨毛癌細胞株(JEG、JAR、BeWo、T3M-3)でのmiRNA発現の差異について付随的に検討した結果、miRNA-512、517、518、519、526)が癌細胞株において1000倍以上の発現更新を示していることを見出した.また子宮内膜癌に関する付随的研究により、変異型p53蛋白がmiRNA-130bのプロモーター領域に結合しその発現を調節し、miRNA-130bの標的因子であるZEB1の発現を調節し子宮内膜癌の上皮間葉移行に 関与していることが見出された(Dong, P. Oncogene 1-10、2012).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
おもに卵巣がんにおけるマイクロRNA発現の意義、発がんへの関与への検討を目的としていたが、採取する卵巣がん組織の検体数は不足しているため、細胞株を主に使用して検討を続けていた。また、研究を発展させるために卵巣がんのみでなく、絨毛癌、子宮内膜癌などの他の婦人科癌腫でのマイクロRNA発現に関する検討を進めていたため。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き卵巣がん組織の採取を継続するが、研究の主体は卵巣がん細胞株とし、標的マイクロRNAの機能解析を進めていく。卵巣がんに関してはコントロールとなる正常卵巣細胞株がないのが難点であるため、コントロールとして正常細胞株の存在する絨毛癌なども視野に入れ、広く婦人科悪性腫瘍に関するマイクロRNAの機能に関して検討を続けていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は臨床検体の集積が十分ではなく、細胞株を用いた発現検討を主に行った。細胞株での遺伝子導入実験までに研究を進めることができず、臨床検体に関する検討も少数であったため予定した経費を下回る使用額となった。平成25年度においては、研究対象のマイクロRNAの発現導入、発現抑制の研究に必要なプラスミド作成や、トランスフェクション試薬の費用、臨床検体でのマイクロRNA発現検討に相当額の費用が必要となることが予想されるため、前年度の未使用額を本年度に充当する予定である。
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