研究課題/領域番号 |
23592429
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
横山 良仁 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90261453)
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キーワード | クロフィブリン酸 / Carbonyl reductase / アポトーシス / phagocytosis |
研究概要 |
in vitro卵巣癌細胞でのCR発現量はクロフィブリン酸の濃度依存性に増加した。クロフィブリン酸投与群の腫瘍内でのCR発現量は著明に増加していた。腫瘍内のmPGES発現量はクロフィブリン酸投与により約半分に減少、血中ならびに腹水中のPGE2濃度は約25%まで減少した。腫瘍内の血管密度はクロフィブリン酸投与により約50%減少し、VEGFの発現強度も半減した。腹水中のVEGF量はコントロールに比べ30%まで減少した。クロフィブリン酸投与により腫瘍内のアポトーシス細胞は2.5倍増加した。MCR導入細胞において、CRは強発現するとともにVEGFの発現は低下した。TOV21G細胞、MCAS細胞ともコントロール群は観察した5週間腫瘍体積が増加した。一方、pTreCR導入TOV21G細胞、pTreCR導入MCAS細胞は2週目をピークとし、それ以降5週目まで腫瘍体積は減少した。コントロールとpTreCR導入群間で腫瘍増殖曲線に有意差を認めた。pTreCR導入群の腫瘍はネクローシスと炎症性細胞浸潤が顕著であった。pTreCR導入群の腫瘍組織内のVEGF発現と血管密度はコントロール群に比べ有意に減少していた。pTreCR導入群の腫瘍ではCaspase-3の活性化が起こっておりアポトーシス細胞の出現頻度はコントロール群に比べ有意に増加していた。MFG-E8蛋白発現はpTreCR導入群で有意に増加していた。MFG-E8はpTreCR導入群の腫瘍細胞質内と間質細胞内に広く分布しており、MFG-E8発現箇所でマクロファージによるアポトーシス細胞の貪食像が観察された。pTreCR導入群の腫瘍が自然退縮する機序は、血管新生の抑制とアポトーシス細胞の増加、それらに加え増加したMFG-E8に誘導されたマクロファージとアポトーシス細胞間のphagocytosisによる壊死の増加によると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
①Methyl-ALA-PDTとクロフィブリン酸(CA)の併用により相加効果以上の効果が得られるか、②GSTO1導入細胞による癌性腹膜炎に対する治療ではコントロールに比べ生存期間が延長するか、③開腹によるハロゲンランプの照射と腹腔鏡によるレーザー光照射では生存期間に差が生じるのかどうか、を検討するための実験を行う年度あったが、GSTO1の細胞導入が成功せず、実験に遅れをきたしている。
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今後の研究の推進方策 |
① GSTO1プラミドDNAを増やし、アデノウィルスベクター作製キット(AdMax TM Kit)を用いてGSTO1を組み込む。アデノウィルスベクター(AD)を取り込むことがすでに報告されているHRT細胞を用いる(Gene Ther 8; 1450, 2001)。 ② In vivo法で行うため、HRT細胞で皮下担癌マウス、癌性腹膜炎マウスを作製する。 ③ GSTO1 DNAを組み込んだアデノウィルスベクター(GSTO1-AD)の投与法として腹腔内投与、静脈内投与、腫瘍局注、いずれの方法が腫瘍内にGSTO1-ADの取り込みが良好か調べる。GSTO1の腫瘍内取り込み量の定量はSouthern blot法で比較する。 ④ 最適なin vivo法が決定されれば、DISS、MCAS、TOV21G等の細胞由来腫瘍にも、決められたin vivo法でGSTO1-ADを導入してみる。取り込みが不良な場合、p53抗体、HER2抗体等で取り込み量をアシストする方法を構築する。
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次年度の研究費の使用計画 |
GSTO1遺伝子をアデノウィルスベクターに組み込みin vivo法での腫瘍内への集積法を検討する。そのためアデノウィルスベクター作製キットがあれば実験は効率的である。それに対する実験動物の準備も必要である。卵巣癌患者へのPDT施行とクロフィブリン酸投与の臨床応用について1年間で10名の患者登録を予定しており、Lancet Oncol 7; 392, 2006の報告に準じてヒトへ投与するアミノレブリン酸塩酸塩がドイツMedac社から入手可能でありその費用を計上した。クロフィブリ酸についてはクロフィブラート1日1500mgを1年間服用した場合の10名にかかる費用を算出した。最終的な研究成果を学術雑誌、HP、報告集等で報告するための費用を計上した。
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