研究課題/領域番号 |
23592431
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
伊藤 潔 東北大学, 災害科学国際研究所, 教授 (70241594)
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研究分担者 |
鈴木 貴 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10261629)
吉永 浩介 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), その他 (40343058)
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キーワード | LC-MS/MS法 / 子宮内膜癌 / Intracrinology / Estrogen / Testosterone / Androstenedione / CRH |
研究概要 |
本年度は、精度を昨年度に確認した新測定法Liquid chromatography/ electrospray tandem mass spectrometry (LC-MS/MS)により、ヒト正常子宮内膜、内膜癌(類内膜腺癌および漿液性腺癌)40症例で、性ステロイド濃度(エストロゲンとしてEstradiol(E2), Estrone(E1)、アンドロゲンとしてTestosterone, 5α-dihydrotestosterone)の微量測定を行った。またAndrostenedioneあるいはTestosteroneを基質として添加した後での性ステロイド濃度を検討した。この実験で類内膜腺癌でのE2などの性ステロイド濃度は正常内膜に比較して高いこと、基質として添加したAndrostenedioneやTestosteroneが組織内で性ステロイド産生に使用されていることが判明した。このことより類内膜腺癌局所でエストロゲンを含めた性ステロイド産生が行われていること、すなわちIntracrinologyの存在が示唆された。一方、漿液性腺癌での性ステロイド濃度は低く、局所での産生は行われていないと考えられた。また、内膜癌培養細胞と内膜癌間質細胞との共培養実験を行った。単独培養に比較して共培養ではエストロゲン合成酵素の一つsteroid sulfatase (STS)の発現が亢進しており、tumor-stromal interactionが局所でのエストロゲン合成に大きく関与することが示唆された。さらに近年、ストレスや炎症は、エストロゲン依存性癌の発生進展との関連性あるいは局所でのサイトカイン発現との関連性が指摘されている。そこでストレス制御に関与するcorticotropin-releasing hormone (CRH)のヒト内膜癌での発現を免疫染色で検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト正常子宮内膜、内膜癌(類内膜腺癌および漿液性腺癌)において、新測定法Liquid chromatography/ electrospray tandem mass spectrometry (LC-MS/MS)により性ステロイド濃度の微量測定を行い、類内膜腺癌局所でエストロゲンを含めた性ステロイド産生が行われていること、すなわちIntracrinologyの存在を確認することができた。一方、漿液性腺癌での性ステロイド濃度は低く、局所での産生は行われていないという新たな知見が得られた。また、内膜癌培養細胞と内膜癌間質細胞との共培養実験でエストロゲン合成酵素の発現を調べることにより、tumor-stromal interactionが局所でのエストロゲン合成に大きく関与することが判明した。さらに、エストロゲン依存性癌の発生進展との関連性あるいは局所でのサイトカイン発現との関連性が指摘されているcorticotropin-releasing hormone (CRH)が、ヒト内膜癌で発現しているという新たな知見が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
この研究の基盤をなす内膜癌培養細胞と間質細胞との共培養実験およびヒト子宮内膜癌組織での微量ホルモン測定や免疫染色を、24年度にひき続いて行う。またtumor-stromal interactionをさらに詳細にみるために性ステロイド合成酵素の活性を制御すると考えられるcytokineなどの誘導因子の検討を行う。ただし、東日本大震災により、当大学でストックしていたサンプルを含めた研究材料は大半が失われており、今後のサンプル収集の推移などによっては、研究の遂行に多少の遅れが生じる可能性がある。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴って発生した未使用額であり、平成25年度請求額と合わせて、次年度に計画している研究の遂行に使用する予定である。
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