研究課題/領域番号 |
23592432
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
宇都宮 裕貴 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (10359507)
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研究分担者 |
鍋島 寛志 東北大学, 大学病院, 助教 (90547415)
鈴木 史彦 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20400343)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 子宮内膜癌 / レチノイン酸 / エストロゲン受容体 / 培養細胞 / クロマチン免疫沈降クローニング |
研究概要 |
レチノイン酸(RA)は核内受容体に結合することによりその転写活性を調節し、様々な細胞の増殖を停止し、分化・アポトーシスを誘導する。またRA受容体(RAR)を介するシグナル伝達を阻害することにより癌の発症や増殖・進展が引き起こされると報告されている。ところが最近になり、RARはエストロゲンレセプター(ERα)と標的結合領域を広範囲に共有していることが報告され、拮抗または相補的な作用を有することが報告された。今回我々は子宮内膜癌で強発現しているRARαおよびERαに直接結合する新たな共通の転写制御領域を同定し、その機能解析を行うためにERα陽性の子宮内膜癌細胞株(Ishikawa細胞)を用いて検討を行った。始めに、Ishikawa細胞を用いてShort Interfering(si)RNA法でRARαおよびERαをノックダウンした。それぞれmRNAレベルで90%前後、タンパクレベルで60%前後のノックダウン効率が得られた。そしてRARαをノックダウンすると細胞増殖は亢進しアポトーシス誘導が抑制された。一方、ERαをノックダウンすると細胞増殖は抑制され、強いアポトーシス誘導が認められた。よってRARαとERαには互いに相反する作用があることが示唆された。このことはRARαおよびERαに直接結合する共通の転写制御領域の機能解析を行うにあたり非常に興味深い結果である。その拮抗する現象より新しいRARαおよびERαを介した子宮内膜癌の病態に関する分子機構を導き出し、レチノイン酸治療の有用性を示唆するものと考えらえた。現在、Ishikawa細胞株を用いてRARαが直接結合する標的部位をクロマチン免疫沈降(ChIP) cloningの手法を用いて選定するため、条件設定を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Ishikawa細胞においてRARαとERαは互いに拮抗する作用が確認でき、非常に興味深い結果が得られている。最初に仮説として定義した「RARαおよびERαを介した子宮内膜癌の内分泌学的な治療」にレチノイン酸が有効な可能性が示唆される結果が得られており、今後も仮説に基づいた実験計画の遂行が可能な状況である。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、RARαとERαに着目しRARα標的結合部位とERα標的結合部位の検討を行う。具体的には、RARαが直接結合する標的部位をクロマチン免疫沈降(ChIP) cloningの手法を用いて選定する。次に、両受容体標的部位のVenn diagramを作成し、推定される共有標的遺伝子を選定する。また、それらの遺伝子群の分子間ネットワークを解析する。それらの共有標的遺伝子のうちcis-acting elementを同定するため、標的部位を組み込んだプラスミド・コンストラクトを作成・形質移入し、標的遺伝子の発現強度の変化を比較検討する。さらに、同定されたcis-acting elementに結合する転写因子やRARαやERαのco-factorを選定し、標的遺伝子の制御にどのように関与するか明らかにしていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成24年度請求額と合わせ、次年度に計画している研究の遂行に使用する予定である。
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