研究概要 |
本研究は、侵入奇胎特異遺伝子の同定が目的である。マイクロアレイ解析により同定を試みる。この際、初代培養を行い、純化した絨毛外絨毛細胞におけるmRNAの発現を侵入奇胎になった症例と自然寛解した症例で比較することにより抽出を試みる。初期絨毛初代培養の報告(Blood 106: 428-435, 2005)に準じて、胞状奇胎の初代培養を行い、これまでに、6例の胞状奇胎で初代培養を行った。本年に行った6例はすべて自然寛解した症例であったため、侵入奇胎特異遺伝子の抽出は施行できなかった。現在も継続して初代培養を続けている。低酸素濃度条件下の初代培養を行った。2例では、1検体を2分し、通常酸素濃度条件下と低酸素濃度条件(2% O2)下で並行して行った。低酸素下でも、通常条件下と同じように培養可能であることが確認された。培養開始48時間後に絨毛外絨毛細胞(EVT様細胞;EVTs)を回収し、RNAを抽出した。RT-PCR法によって、beta Actin, HLA-G, p57KIP2, hCGの発現を(1)絨毛、(2)EVTs、(3)低酸素EVTsの3通りで比較した。hCGはEVTs・低酸素培養EVTsにくらべて、絨毛で発現量が高かった。HLA-Gおよびp57KIP2は培養前の絨毛にくらべてEVT・低酸素培養EVTs で発現が亢進していることが確認された。HLA-Gおよびp57KIP2の発現は低酸素負荷の有無により変わらなかった。また低酸素負荷により発現が亢進すると考えられるHIF-1の発現についても検討したが、mRNAレベルでの変動は認めなかった。本年度の研究で、胞状奇胎絨毛の初代培養が、正常絨毛初代培養と同じように可能であることが明らかになった。また、低酸素条件下でも培養が可能であった。侵入奇胎となった症例の純化した絨毛外絨毛細胞を獲得し、マイクロアレイ解析を進める予定である。
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