研究概要 |
本研究は、侵入奇胎特異遺伝子の同定が目的である。胞状奇胎組織は、細胞性栄養膜細胞・合胞体性栄養膜細胞・中間型栄養膜細胞・間質細胞の複数の細胞集団から構成されている。このためターゲット遺伝子の絞り込みが困難になっているのではないかと考えた。そこで、胞状奇胎絨毛の初代培養を行い、純化した絨毛外絨毛細胞におけるmRNAの発現を侵入奇胎になった症例と自然寛解した症例で比較することにより侵入奇胎特異遺伝子の抽出を試みた。 初期絨毛初代培養の報告(Blood 106: 428-435, 2005)に準じて、胞状奇胎の初代培養を行い、これまでに、12例の胞状奇胎で初代培養を行った。本年施行した6例のうち1例が侵入奇胎を発症した。この症例を含めて、培養開始48時間後に絨毛外絨毛細胞(EVT様細胞;EVTs)を回収した。EVT特異マーカーであるHLA-G抗体によるMACS法により、HLA-G発現細胞の純化を行った。RNAを抽出し、RT-PCR法によって、beta Actin, HLA-G, p57KIP2, hCG, HIF-1の発現を検討した。HLA-G, p57KIP2, hCG, HIF-1の発現は、侵入奇胎発症例と、自然寛解した症例ではっきりした差を認めなかった。 また、同時に抽出したEVTsゲノムDNAを用いて、胞状奇胎組織のゲノムとの間のメチル化に差があるかをインプリント遺伝子であるKvDMRについて検討した。 胞状奇胎の初代培養を継続し、侵入奇胎発症例を含めてEVTsを獲得し、MACS法でEVTを純化し、マイクロアレイ解析を進める予定である。
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