本研究ではテロメラーゼが活性化された細胞でのみ増殖可能な改変型アデノウイルス(Telomerase-specific replication adenovirus: TRAD)を用いた難治性婦人科癌の治療、特に癌幹細胞をターゲットとした治療の開発を第一の目的としている。我々はTRADのマウス卵巣癌腹膜播種モデルにおける有用性を示してきたが(Cancer Gene Ther. 2010; 17:11-9)、本研究ではさらに癌幹細胞に対する有効性にフォーカスして抗腫瘍効果の解析と臨床応用に向けた検討を行った。平成25年度は婦人科癌細胞株においてCD117陽性かつCD44陽性細胞の細胞群を対象としてTRADの有効性を検討した。CD117+/CD44+細胞群は他に比してより高い増殖能と造腫瘍能を認めた。また抗癌剤シスプラチンに対して抵抗性を示した。これに対しTRADはCD117+/CD44+細胞群に対して他分画に比べて高い殺細胞効果を示した。 第二の目的はTRADを応用したGFP発現型TRADを用いた癌細胞イメージング技術の確立と実用化に向けた臨床的意義の解明である。具体的には末梢血中の極少数の腫瘍細胞(circulating tumor cells: CTC)を GFP発現型TRADを感染させることで発光させ可視化するものである。平成25年度は婦人科癌症例に対して症例を重ねると同時に、前年度に報告した(Br J Cancer. 2012; 107(3): 448-54)、婦人科癌症例での予後解析を行った。CTCが治療開始後も残存した群では有意に予後が不良であり、予後マーカーとして有用である可能性が示された。
|