研究概要 |
Notchシグナル経路は幹細胞維持等に作用することが知られており、現在までに種々の固形癌で、その発現異常が報告されている。本研究では、子宮内膜癌でのNotchシグナル関連分子の発現と機能を解明することを目的とする。まず、正常子宮内膜37例および子宮内膜癌(類内膜腺癌)76例において、Notch関連タンパクであるNotch受容体(Notch1, Notch3)およびNotchリガンド(Jagged1, Delta4)の発現と局在を免疫染色にて検討した。染色評価は陽性細胞の率と染色強度を掛け合わせたpositivity index (PI)を算出して行い、さらに臨床病理学的因子(組織grade、臨床病期、予後等)との相関を検討した。結果、Notch関連タンパクは全て内膜癌で正常と比較し有意に発現が亢進しており、特にNotch1, Jagged1両者陽性の場合、有意に予後が不良であることを見出した。(P=0.015) 次に、子宮内膜癌におけるNotchシグナル経路の機能解析を行う目的で、子宮内膜癌細胞株(Hec1A, Hec1B, KLE, HHUA, Ishikawa)にNotch阻害剤(DAPT)添加を行い、増殖能の変化をWST1アッセイで検討したが、全く変化を認めず、Notchシグナルは子宮内膜癌細胞の増殖には関与しないと考えられた。さらに、KLE細胞を用いて、遊走能および浸潤能を、それぞれWound healing assayとMatrigel invasion assayにて検討を行った結果、Notchシグナル阻害剤DAPT添加により、遊走能の有意な低下(p<0.05)と浸潤細胞の有意な減少を認め(p<0.05)、Notchシグナルが子宮内膜癌細胞の遊走能・浸潤能に関与することが明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
siRNAやNotch抑制剤、さらにはNotch関連タンパクの遺伝子導入等の手法を用いて、今後、さらに機能解析を進める。さらにNotchシグナルが子宮内膜癌の浸潤能を介し予後不良に寄与していることが考えられるため、子宮内膜癌転移動物モデルを作製し、Notch阻害剤の作用を検討する。また、Notchシグナルの中で、Notch1-Jagged1経路が予後不良に関与していると考えられたため、Notch1, Jagged1に対するshRNAを作製し、子宮内膜癌浸潤能の変化をin vitro, in vivoで検討する。研究遂行上も問題点は特にない。
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