研究概要 |
Notchシグナル経路は幹細胞維持等に作用することが知られており、現在までに種々の固形癌で、その発現異常が報告されている。本研究では、子宮内膜癌でのNotchシグナル関連分子の発現と機能を解明することを目的とする。我々は昨年度までの研究で、Notch関連タンパク(Notch受容体(Notch1, Notch3)およびNotchリガンド(Jagged1, Delta4))は全て内膜癌で正常と比較し有意に発現が亢進しており、特にNotch1, Jagged1両者陽性の場合、有意に予後が不良であることを見出した(P=0.015)。さらに臨床病理学的因子(組織grade、臨床病期、予後等)との相関を検討した。さらに、子宮内膜癌細胞株(Hec1A, Hec1B, KLE)にNotch阻害剤(DAPT)添加を行ったところ、WST1アッセイで72時間後まで増殖能は変化しなかったが、Wound healing assayで遊走能の減弱が観察された(p<0.05)。さらにKLEではマトリゲル浸潤アッセイで浸潤細胞の有意な減少を認め(p<0.05)、Notchシグナルが子宮内膜癌細胞の遊走能・浸潤能に関与することが明らかとなった。 次にNotchシグナルはヒストンメチル化,ヒストンユビキチン化に関与するポリコーム遺伝子群発現に関与することが報告されているため、免疫染色及びreal-time RT-PCRで検討を行った。その結果、polycomb repressive complex 2(PRC2)の構成要素である、Suz12, EZH1/2, EEDの正常に比較して内膜癌症例での発現亢進が観察され、特に臨床進行期3,4期、脈管侵襲やリンパ節転移陽性例で有意な発現亢進を認めた(P<0.05)。またこれらの発現は細胞周期の正の調節因子であるサイクリンD1、A発現と強い相関が観察された。
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