研究課題/領域番号 |
23592443
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
森重 健一郎 岐阜大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90283788)
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研究分担者 |
伊藤 直樹 岐阜大学, 医学部附属病院, 講師 (30184675)
古井 辰郎 岐阜大学, 医学部附属病院, 講師 (00313883)
豊木 廣 岐阜大学, 医学部附属病院, 助教 (40402169)
早崎 容 岐阜大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20566492)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 卵巣癌 / 癌幹細胞 / 低酸素 |
研究概要 |
我々は難治性卵巣癌の治療法の開発を目的として、HIFをターゲットとした阻害剤の分子標的薬としての可能性を検討してきた。平成23年度の計画であった卵巣癌手術検体からのTissue Micro Arrayの作成に関しては、約100症例の検体からのスポット抽出が終了し、まもなく準備できるところである。また卵巣癌細胞株を用いた実験としては、まず初めに低酸素環境下でのHIF-1の発現亢進をウエスタンブロッティング法により検討し、酸素濃度1%環境下2時間以降でHIFの発現誘導を検出した。その時、下流遺伝子であるVEGFの発現も上昇していることをELISA法により確認した。次にHIF阻害剤であるTX-402を用いて、VEGFの発現に対する効果を検討したところ、いずれも低酸素下において濃度依存的に顕著にその発現を抑制していた。以上の結果から、HIFをターゲットとした阻害剤は、卵巣癌において低酸素下で増大したVEGF産生を阻害することにより、血管新生を抑制し、癌の増殖・転移を抑制する可能性が示された。また、低酸素による癌幹細胞化にも注目し、幹細胞因子が誘導されるかReal time PCRを用いて検討したところ、Oct3/4, Sox2, Lin28, Nanogの低酸素による発現誘導がみられた。またその時、卵巣癌を始め多くの癌種で癌幹細胞のマーカーとして知られているCD133の発現も低酸素により誘導されていた。そこで、低酸素によりHIFが増加し、幹細胞因子の発現が誘導され、癌幹細胞化が引き起こされるという仮説を立て、HIF阻害剤の効果を検討した。その結果、幹細胞ならびに癌幹細胞マーカーの低酸素による発現誘導はHIF阻害剤によって抑制された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
TMAは準備できるところであるが、当初の計画にあったその後の抗体を用いての解析はこれからである。また細胞株を用いた実験はおおむね順調に進行しているが、ヌードマウスを用いたin vivoでの実験は始めたところである。
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今後の研究の推進方策 |
TMAを用いて、HIF-1,2αについてその発現と抗がん剤感受性・予後との関連を調べる。HIF阻害剤を用いて、主にin vivoでの効果の検証を進めていきたい。その際、他の抗癌剤との併用効果も検討する予定である。また、低酸素による癌幹細胞化について、主に卵巣癌細胞株とマウスを用いて検討を進めていきたい。具体的には、既に見出している低酸素下での幹細胞因子の発現誘導がHIFのみを介しているかどうか検討するため、siRNAを用いた実験を行う予定である。また低酸素環境下での培養後の癌幹細胞化を、フローサイトメトリー、スフィアアッセイやマウスにおけるin vivoでの評価も検討していきたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は免疫不全マウスを用いたマウスの実験に着手できなかったため、次年度はその購入費に研究費を充てる予定である。また、他には主にキットなどを含む消耗品に使用する予定である。
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