研究課題
癌組織の内部は急激な癌細胞の増殖のため機能的な血管新生が不十分となり、低酸素となっている。そのような低酸素微小環境には治療抵抗性の癌幹細胞が発生し、維持されている可能性がある。我々は卵巣癌細胞株において低酸素環境下でHIF1α、HIF2αの発現が亢進していることを観察した。またHIFの発現に伴って幹細胞因子(oct3/4, nanog, lin28, sox2)や癌幹細胞マーカー(CD133、CD44)の発現が亢進していた。またsiRNAによってHIF1α、HIF2αそれぞれの発現をノックダウンすると、HIF2αの発現抑制に伴って、特異的に癌幹細胞因子・マーカーの発現が抑制されていた。つまり卵巣癌における低酸素微小環境での癌幹細胞発現誘導はHIF2αを介したものであることが示唆された。さらに低酸素細胞毒TX-402(岐阜薬科大学永澤秀子氏より供与)によってHIF2αの発現が抑制され、癌幹細胞の発現が抑制されることを見出した。次いで卵巣癌のin vivo実験に先立って、卵巣癌細胞株を用いたスフェロイド(三次元低酸素モデル)をin vitroで作製した。このモデルではスフェロイドの中央部が低酸素領域(ピモニダゾールで確認)となって癌幹細胞様の細胞(oct3/4発現)が出現する。TX-402で処理すると、このスフェロイドの増大が抑制され中央部の低酸素領域の細胞が死滅していた。同時にoct3/4発現細胞が消失していた。このようには腫瘍組織内部の癌幹細胞を含む低酸素領域の癌細胞を死滅させることが示された。癌幹細胞は抗がん剤などに対する治療抵抗性に関与していることがわかっており、低酸素細胞毒TX-402は治療感受性を向上させることができる可能性が示された。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (1件)
Magn Reson Med Sci
巻: 13 ページ: 39-44
Health Economics Review
巻: 3(1) ページ: 31
10.1186/2191-1991-3-31
Abdom Imaging
巻: 38 ページ: 412-416
10.1007/s00261-012-9887-1.
Am J Pathol
巻: 182 ページ: 1876-1889
10.1016/j.ajpath.2013.01.039.
Eur J Radiol
巻: 82 ページ: 417-421
10.1016/j.ejrad.2013.04.010.