研究課題/領域番号 |
23592444
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
袁 紅 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), COE特任助教 (90597866)
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研究分担者 |
千賀 威 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80419431)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 卵巣癌 / EMT / Snail / AXL1 / 浸潤 |
研究概要 |
我々はALX1という遺伝子が卵巣癌の組織でその発現が亢進していることを見出した。そこで卵巣癌細胞であるSKOV3にALX1に対するsiRNAを導入し、その変化を観察した。すると、細胞の形態が顕著に変わることを発見した。詳しく解析した結果、ALX1の発現を抑制することにより、SKOV3細胞は上皮細胞のマーカー遺伝子であるE-cadherinを強く発現するようになっていた。逆にALX1をSKOV3細胞に過剰発現すると、E-cadherinの発現が顕著に抑制された。さらに他の上皮細胞にALX1を導入したところ、同様にE-cadherinの発現が抑制され、細胞の形態が顕著に変化した。この結果は、ALX1が細胞の形態変化に重要な働きをしていると考えられる。さらにALX1が癌細胞の悪性に関与しているか検討した。ALX1は癌細胞の増殖、細胞死に対する耐性、浸潤に深く関与していることが明らかとなった。ALX1がどのようにしてこのような形態変化を誘導するのか、その分子メカニズムの解明を試みた。その結果、Snailという転写因子の発現がALX1により制御されていることが明らかとなった。ALX1の発現を抑制するとSnailの発現が低下し、逆にALX1を過剰発現するとSnailの発現が亢進した。ALX1がSnailのプロモーター活性を制御することをルシフェラーゼアッセイにて確認した。以上の結果、ALX1はSnailの発現を介し、細胞の形態、癌細胞の悪性化を制御していると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目的に掲げたことは(A)ALX1の抗体作成、(B)ALX1の細胞内局在の確認、(C)ALX1がEMTを制御することを明らかにする、(D)ALX1がSnailの転写を制御する、である。これらのうち、(B)、(C)、(D)は達成した。しかしながら、(A)は達成できなかった。抗体の作成を2度試みたが、作成することが不可能であった。そのため、中止をすることにした。4つの項目のうち3つを完全に達成し、さらにALX1が癌細胞の悪性化に関与していることを明らかにしている。達成できなかったものもあるが、当初の目的以上に達成した部分もあり、おおむね順調に研究は進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
ALX1の発現を抑制した癌細胞を作成し、動物実験をおこなう。ALX1に対するshRNAベクターを作成する。そして卵巣癌由来の細胞であるSKOV3、ES-2細胞にshRNAをレトロウイルスを用いて導入し、発現を抑制する。コントロールとして、ルシフェラーゼに対するshRNAを発現した癌細胞を作成する。shRNAの導入によりALX1の発現が抑制されたか確認し、EMTの逆の変化、METが誘導されたか検討する。また、癌の悪性化が抑制されたかin vitroの実験系を用いて確認する。次にこれらの細胞をマウスに移植し、その増殖を検討する。マウスの大腿の皮下に移植し、癌細胞の大きさを計測する。また、マウスの腹空内に移植し、癌細胞の増殖を調べる。ALX1が抗がん剤の耐性獲得に関与するか検討する。コントロール細胞、ALX1 shRNAを発現した細胞に異なる濃度の抗がん剤をin vitroの系で加え、それによる増殖抑制効果を検討する。また、細胞死が促進するか明らかにする。次にこれらの癌細胞をマウスに移植し、抗がん剤を投与する。そしてALX1の発現が抗がん剤に対する耐性獲得に関与しているか明らかにする。ALX1を過剰発現した細胞を用いて、同様な研究をおこなう。
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次年度の研究費の使用計画 |
以下に掲げる品目に関し、経費を使用する予定である。動物実験のためのマウス。細胞培養関連試、器具。組み換えDNA実験に用いる酵素、DNAプライマー。
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