研究課題
絨毛性疾患には、胞状奇胎(良性)、侵入奇胎(境界悪性)、絨毛癌(悪性) がある。human chorionic gonadotropin(hCG)は絨毛性疾患の優れた腫瘍マーカーであるが、正常妊娠時にも分泌される。hCG の糖鎖構造が境界悪性以上(侵入奇胎、絨毛癌)では異なりることが知られており、糖鎖構造よりN-アセチルグルコサミン転移酵素IV(GnT-IV)およびコア2型O-グリカン合成酵素(C2GnT-1)の2つの糖転移酵素が原因と考えられた。絨毛癌の早期診断に有用な腫瘍マーカーの発見および絨毛細胞癌化メカニズム解明を目的として、この2つの糖転移酵素の絨毛癌における機能を解析した。GnT-IVaおよびC2GnTの発現は、正常絨毛や胞状奇胎では少なく、侵入奇胎、絨毛癌などの絨毛性腫瘍において強かった。絨毛癌細胞株JarにGnT-IVa shRNAを遺伝子導入したところGnT-IVa発現抑制により、細胞外基質への接着能、遊走能と浸潤能が低下した。ヌードマウスの皮下腫瘍投与でもGnT-IVa発現抑制により腫瘍接着が抑制され予後が改善した。胞状奇胎細胞株およびJarによるGnT-IVa過剰発現の結果、細胞の遊走能および浸潤能は促進し、絨毛癌においてGnT-IVaはbeta1 integrinおよびhCGへの糖鎖修飾を介して接着能を促進することにより、癌の浸潤を促進することが解明された。絨毛癌細胞株JarにおいてC2GnTの発現を抑制すると、細胞外基質への接着が抑制され、遊走能および浸潤能が抑制された。hCGのセリン糖鎖修飾が抑制されることも確認された。絨毛癌細胞において、GnT-IVaのプロモーター解析を行ったところ、転写因子cRelがNFkB2と2量体を形成してGnT-IVaの上流域に結合し転写促進することが解明された。絨毛細胞の癌化にcRelが関与している可能性が示唆された。
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Br J Cancer
巻: 107 ページ: 1969-1977
10.1038/bjc.2012.496.