研究課題
mTORは細胞増殖作用を有し、癌治療の標的分子として注目されている。そこで我々は、mTOR Complex 2(mTORC2)に着目し、卵巣癌の発癌や進展、また卵巣癌のmTORC1阻害剤耐性化に関与するかを検討した。平成25年度は、まずmTORC2がmTORC1阻害薬耐性化に関与しているか?について、様々な組織型由来の卵巣癌細胞株を用いて研究を行った。その結果、①mTORC2は卵巣明細胞腺癌において高頻度に発現しており、②明細胞腺癌のmTORC1阻害薬耐性化を促進すること、③mTORC2を阻害するとmTORC1阻害薬耐性化が回避できることを明らかにした(Mol Cancer Ther. 2013;12:1367-77.)。mTORC2が卵巣癌の重要な治療標的であることを示す結果である。mTORC2標的治療を明細胞腺癌治療に臨床応用する場合、mTORC2標的治療と抗癌剤の併用療法の開発は必須のステップである。明細胞腺癌は抗癌剤に耐性を示し、現状ではこれに対する有効な抗癌剤は存在しない。そこで新規抗癌剤であるTrabectedineに着目し、①卵巣明細胞腺癌に対するTrabectedinの抗腫瘍効果は既存の抗癌剤の中で最も強く、②TrabectedinをIrinotecanと併用すると非常に強い相乗効果が発揮されること、③Trabectedin+Irinotecan+mTOR阻害薬の併用が明細胞腺癌に対する有望な治療レジメンであることを報告した(Clin Cancer Res 2011;17:4462-73., Int J Gynecol Cancer 2014, in press)。三年間の研究により、卵巣癌治療におけるmTORC2の治療標的としての重要性、mTORC2標的治療の有効性を示した。mTORC1とmTORC2の両方を標的とすることにより、卵巣癌の予後が改善されることを期待する。
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