研究課題/領域番号 |
23592447
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
澤田 健二郎 大阪大学, 医学部附属病院, 助教 (00452392)
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研究分担者 |
馬淵 誠士 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00452441)
磯部 晶 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60397619)
橋本 香映 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90612078)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 卵巣癌 / 腹膜播種 / 腹膜中皮細胞 / 骨髄由来細胞 |
研究概要 |
癌細胞の腹膜播種が進展して発症する癌性腹膜炎の治療は極めて難渋し、消化器癌や卵巣癌の死因に直結する。そこで我々は腹膜播種を形成する微小環境細胞に焦点をあて、微小環境細胞が癌細胞の増殖、浸潤、治療抵抗性に与える影響を網羅的に解析し、影響を与える分子を同定するべく研究を行っている。実験の第一段階として腹膜播種環境の形成する細胞の初代培養を行った。婦人科悪性手術における大網摘出術の際に大網の正常部分を一部細切し、無菌化にコラゲナーゼ処理することにより腹膜中皮細胞を分離した。この初代培養細胞が中皮細胞であることは敷石状の形態および Vimentin の免疫染色により確認した。この腹膜中皮細胞を 96-Well の細胞培養皿に一層になるように培養し、腹膜表面の In vitro での再構築を行い、その上に蛍光色素で標識した卵巣癌細胞株 SKOV3ip1 を撒き、癌細胞と腹膜中皮細胞の接着を確認した。そして、抗 Integrinα5抗体の投与により、その細胞間接着は有意に阻害されることを解明した。続いて、卵巣癌患者腹水より単球のマーカーである CD11b を抗原としてマグネットビーズ法により、骨髄由来細胞を分離培養した。分離培養した初代培養細胞の大部分は CD68 が陽性であることを FACS 法で検証し、骨髄由来細胞の大部分がマクロファージであることを確認した。この CD 11b 細胞と卵巣癌細胞株 SKOV3ip1 細胞を用いて、共培養による癌細胞の浸潤能を Boyden Chamber を用いて検討した。その浸潤能の亢進は抗インターロイキン6(IL-6) 受容体抗体の添加により部分的ではあるが抑制された。以上ここまで、腹膜播種の形成を促進する因子として腹膜中皮細胞への接着を制御するIntegrinα5および骨髄由来細胞より癌細胞の浸潤を促進されるべく分泌されるIL-6を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究目標はIn Vitro での3D腹膜播種モデルの構築である。腹膜中皮細胞および骨髄由来細胞の初代培養には既に成功している。現在、大網より線維芽細胞の分離培養を行っている。分離培養の条件設定でやや時間を要したが、ピュアな線維芽細胞の分離培養の目処は立っている。よって、おおむね順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は上述したこれらの初代培養細胞を組み合わせたIn Vitro 3D 腹膜播種モデルの構築を行う。それに卵巣癌細胞を撒くことにより起こる分子の発現変動の網羅的な解析を行う。当初の実験計画では、cDNA microarray 法で行う予定としていたが、大阪大学医学部共同研には蛋白質の網羅的な発現解析方法であるプロテオミクスの代表的手法であるiTRAQ 法を行うことが可能な実験施設と優秀なスタッフが存在する。よって、網羅的な解析はiTRAQ法を用いて行うことに変更する。他は実験計画通り進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
主に、細胞培養用の培養液やディッシュ類、western blottingによる蛋白発現の解析、PCRなどによる遺伝子発現の解析に必要な抗体、測定用キットを購入予定である。またin vivoでの解析に必要なヌードマウスの購入も予定している。それ以外にも、研究を発表するための論文投稿費用も必要である。
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