研究課題
現在、癌の治療戦略において抗癌剤治療は重要な役割を果たしている。婦人科癌治療において抗癌剤の選択は過去の臨床データの蓄積によって行われているが個々の患者に対し予め抗癌剤感受性を行うことにより効果の期待できる薬剤の選択が可能であれば患者および医療サイドの双方に大きなメリットがあると考えられる。我々は新たに開発された初代培養法:CTOSを婦人科腫瘍に応用し抗癌剤感受性試験を確立し難治性婦人科悪性腫瘍患者の治療方針決定に役立てることを目的とした。初年度である平成23年度は婦人科悪性腫瘍組織からCTOSを作製することを当面の目標として研究を開始した。手術により摘出された子宮体癌組織・卵巣癌組織に機械的・化学的処理を加えたのち篩にかけ直径が数十から数百マイクロメーターの腫瘍細胞塊(オルガノイド)を回収。幹細胞培地で数時間浮遊培養したのちピペット操作を繰り返し表面が平滑な球状の構造物(CTOS)が得られることを確認した。得られたCTOS をマウスに移植しxenograft から腫瘍の増殖を確認した。PCRおよび免疫染色を用いてマウスに移植し増殖した腫瘍の上皮がヒト由来であり間質はマウス由来であることも確認している。CTOS培養液に抗癌剤(シスプラチン)を添加しATP 法を用いて感受性試験を行った。この方法は細胞のviabilityの判定を細胞内のATPを定量することにより行い抗癌剤非投与のCTOSと比較する。ATP活性は専用のルミノメーターで測定を行った。上記の標本採取から抗癌剤感受性試験までの一連の研究過程の中で子宮体癌の29例中29例全例でCTOS作成に成功している。そのうち15例はCTOSの増大を認め抗癌剤感受性試験を行った。卵巣癌においては12例中10例でCTOS作成しえたがそのうち9例は培養ディッシュに接着したため抗癌剤感受性試験に至っていない。
3: やや遅れている
子宮体癌組織からのCTOS作成および感受性試験は順調に進んでいる。しかし卵巣癌組織からはCTOS 作成は困難な状況が続いている。これは卵巣癌細胞の性質が子宮体癌細胞と異なり接着性が高く、球状(spheroid)の形態をとる前に培養ディッシュに張り付く状態になってしまうことによる。これを解決するためにマトリゲル内での培養を開始している
トラブルシューティングに関しては連携研究者の大阪成人病センター井上らと検討を行い培養条件を変えてみる。抗癌剤感受性試験がうまくいかないときはATP法以外の方法を行ってみる。
主として培養液、試薬、ディッシュなどの消耗品に研究費を使用する予定である。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (14件) (うち査読あり 14件)
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