研究課題
漿液性子宮体癌のゲノムワイドな包括的遺伝子解析の結果、クロマチンリモデリングに関連する体細胞変異が36.5%の頻度で存在した。また、TP53(81.6%)、PIK3CA(23.7%)、FBXW7(19.7%)、PPPR21A(18.4%)の体細胞変異がみつかった。さらにPIK3CAの体細胞変異と遺伝子増幅 は約50%の頻度で存在した。CCNE1をユビキチン化するFBXW7の体細胞変異とCCNE1の遺伝子増幅を併せると約50%の頻度で異常が存在し、PI3K/AKT経路、FBXW7/CCNE1経路が有望な治療標的となる可能性を見出した。さらに、近年、プロテオミクス解析の結果、NAC1の下流制御因子としてFASN(Fatty acid synthase:脂肪酸合成酵素)が報告された。FASNは以前から、各種癌で過剰発現が報告されており、治療標的の一つと考えられている。今回、我々は卵巣明細胞腺癌におけるNAC1/FASN経路の同定、さらにNAC1/FASN経路が治療標的となり得るか検討した。NAC1タンパク質発現は漿液性腺癌、類内膜腺癌、粘液性腺癌に比べて明細胞腺癌で最も高頻度であった。NAC1の遺伝子増幅はHG漿液性腺癌では21%であったが、明細胞腺癌では0%であった。NAC1タンパク質とFASNタンパク質発現は明細胞腺癌の臨床検体、細胞株のいずれにおいても正の相関を認めた。NAC1高発現、あるいはFASN高発現の明細胞腺癌患者は、PFS、OSともに有意に予後不良であった。明細胞腺癌細胞株において、siRNAでNAC1遺伝子発現を抑制すると、FASN遺伝子発現も抑制された。逆にNAC1発現の低い細胞株にNAC1を安定遺伝子導入すると、FASN遺伝子発現レベルの上昇が認められた。明細胞腺癌細胞株にC75を投与すると、NAC1/FASN経路の存在するものが有意に細胞増殖が抑制された。
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