研究課題/領域番号 |
23592459
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
井箟 一彦 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (60303640)
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研究分担者 |
馬淵 泰士 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (80382357)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 卵巣がん / 免疫寛容 / 免疫療法 |
研究概要 |
癌が増殖・進展するためには腫瘍微小環境内での宿主免疫監視機構からの逃避、免疫寛容の獲得が必須である。Indoleamine 2,3-dioxygenase (IDO)はトリプトファン代謝酵素であり、腫瘍浸潤性T細胞 (TIL)やNK細胞を抑制することにより腫瘍免疫寛容を誘導する。これまでの我々の研究において、ヒト卵巣癌において腫瘍細胞のIDO発現量は腫瘍内に浸潤するCD8+Tリンパ球数と逆相関し、Stage進行や生存率の低下と相関することが判明している。本研究においては、卵巣癌進展における免疫寛容誘導分子IDOの機能的役割の解明と新規標的免疫療法の開発を目的とし、マウス卵巣癌腹膜播種モデルを用いて検討した。方法はマウス卵巣癌細胞株OV2944-HM-1にマウスIDO遺伝子をstable transfectionし、IDO過剰発現株 (HM-1-IDO)を確立し、in vitroにおける性格をコントロールベクター導入株 (mock)と比較検討した。次にIDO過剰発現株およびmockを100万個ずつ5週令のB6C3F1マウス(♀)に腹腔内移植した後、day11およびday14にて開腹し、腹水量および播種腫瘍重量を比較した。平成23年度までの結果として、IDO過剰発現株のin vitroにおける細胞形態および72時間までの細胞増殖能は親株およびmockと有意差を認めなかった。In vivo実験の結果、IDO過剰発現株移植マウスにおいて腹膜播種腫瘍重量(腹膜を含む合計)および腹水量は、ともにmock株移植マウスと比較して有意に増加し、摘出腫瘍の病理組織学的検索にて腹膜・腸間膜および横隔膜に広汎に浸潤・増殖する卵巣癌細胞を確認できた。以上より免疫寛容を誘導するIDOは卵巣癌の癌性腹膜炎の促進に関与し、分子標的治療の候補に成り得ることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度には、当初計画していた実験は順調に進み、卵巣癌腹膜播種の進展において、免疫寛容誘導分子であるIDOがメインプレーヤーとして重要な役割を果たしていることを、マウスIDO過剰発現卵巣がん細胞株を樹立することにより、マウスIN VIVOモデルで証明できた。次年度以後、この分子を標的とした治療効果を調べる研究への基盤を確立できた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、IDOを中心とした卵巣がんの免疫寛容ネットワークに関連するさらなる分子の同定とともに、IDO阻害剤と抗がん剤との併用抗腫瘍効果、生存延長効果、免疫賦活効果などをマウスモデルでさらに詳細に検討し、臨床応用への基盤を固めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
IDO阻害剤などの試薬の購入、マウスモデルに使用する動物購入、免疫能をみるためのサイトカインエライザやFACSに使用する抗体などに、主に研究費を使用していく。さらにマイクロアレイやサイトカインアレイにも研究費をあてる予定である。
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