研究課題/領域番号 |
23592459
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
井箟 一彦 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (60303640)
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研究分担者 |
馬淵 泰士 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (80382357)
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キーワード | 腫瘍免疫 / 卵巣癌 / 免疫寛容 / 腹膜播種 |
研究概要 |
本年度の研究では、卵巣癌の腹膜播種のプロセスにおいて、トリプトファンの代謝酵素で、免疫抑制作用を有するIndoleamine 2,3-dioxygenase(IDO)に着目し、以下の知見を得た。(1)臨床検体を用いた解析においてIDOが卵巣癌を含む婦人科癌に高頻度に発現し、病期進行や患者生存率の低下に有意に相関すること、またIDOの発現量は腫瘍内CD8+T細胞数と逆相関し、IDOがヒト卵巣癌組織内で宿主免疫細胞を抑制して不良な予後に関与している可能性を示した。(2)次にIDO過剰発現ヒト卵巣癌細胞株を初めて樹立し、ヌードマウスに腹腔内移植すると対照株移植時と比較して播種腫瘍の有意な増加を認めた。(3)ヌードマウスモデルにおいては、T細胞を介する宿主免疫系の関与が解析できない。この限界を打開すべく、マウス卵巣癌細胞株HM-1にマウスIDO遺伝子を導入したIDO過剰発現株を初めて確立し、これをC3B6F1同種マウスに移植した同様の卵巣癌腹膜播種モデルを作成し、Immunecompetentな様態において解析をおこなった。本モデルにおいても、ヌードマウスと同様にIDO過剰発現が腹膜播種および腹水産生を有意に促進し、マウスの生存期間を有意に短縮するデータが得られた。またその際に腹水中の免疫抑制性サイトカインの有意な上昇、および腫瘍組織内のCD8+T-cellおよびNK cellの有意な低下を伴っていた。またこの実験系を用いて、IDO阻害剤であるI-MTが有意に腹膜播種重量を低下させる知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、当初予定していたとおり、マウス卵巣癌のIDO過剰発現細胞株を確立し、これをsyngeneic mouse modelに移植した実験系を用いて、有意な卵巣癌腹膜播種の進展やそのメカニズムにかかわる免疫能の評価が達成できた。
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今後の研究の推進方策 |
HM-1細胞株に加えて、新たに別のマウス卵巣癌細胞株ID8を用いて、ID8の親株および、新たにIDOを過剰発現させたID8細胞も樹立し、同様にこれらの細胞の腹腔内播種モデルにおけるIDOの機能解析とその阻害剤である1-MTの効果を検討する。 さらには、HM-1 mock、IDO過剰発現HM-1を使用し、種々のケモカインおよびケモカイン受容体の発現をreal-time PCRにて比較検討しする。また播種組織においても同様の発現をPCRおよび蛍光免疫組織染色で検討し、これらの結果から、卵巣癌の腹膜播種に重要なケモカインおよびケモカイン受容体を同定する。これらからIDOの免疫寛容誘導作用に関与するケモカインまたはケモカイン受容体を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験動物(マウス)の購入、各種ケモカインおよびケモカインレセプターに関する抗体の購入。PCRのプライマー購入、一般試薬、細胞培養器具にあてる予定である。
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