研究概要 |
マウス卵巣癌腹膜播種モデルにおけるトリプトファン代謝酵素IDOの腫瘍促進的効果の検討:IDO過剰発現株移植マウスにおいて、腹腔内移植後day14における開腹所見はmock移植マウスに比較して肉眼的に著明な腹膜肥厚を認め、病理組織学的にも癌細胞の腹膜浸潤の有意な増加をみた。day10、day14の腹膜播種腫瘍重量および腹水量は、ともにmock移植マウスに比較して有意に増加した。IDO過剰発現株移植マウスは、腫瘍内浸潤CD8+T-cell, NK cellの有意な減少を認めた。 IDO阻害剤1-MTの抗腫瘍効果および抗癌剤との併用治療効果の検討:1-MTを隔日腹腔内投与して、単独効果と抗癌剤との併用効果を検討した。D-1MTの単独投与群において、コントロール群と比較してday10の有意な播種重量の低下および腹水量の減少を認めた。L-1MT単独群では毒性の可能性が認められ有意な抗腫瘍効果を得られなかった。さらに1-MTの隔日腹腔内投与とシスプラチンの毎週投与による併用効果については、有意な相加効果や相乗効果は認めなかった。 IDOの腹水中の免疫関連サイトカイン産生に与える影響の検討:HM-1-IDOおよびMOCKの腹腔内移植マウスにおけるday10の腹水中のサイトカイン濃度を測定したところ、IL-10, およびTGF-β1の有意な濃度上昇を認めた。 以上より、腫瘍由来の免疫抑制分子IDOが卵巣癌の腹膜播種を抑制し、そのメカニズムとして腫瘍微小環境内の宿主T細胞・NK細胞の抑制および腹水中の免疫抑制性サイトカイン促進を介する免疫寛容状態の構築が考えられた。IDOをターゲットとした新たな標的治療の効果が認められたが、抗癌剤との併用に関しては、さらなる検討が必要である。
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