研究概要 |
(背景)腟内細菌叢の乱れが前癌病変の進展,もしくはHPV感染と相関するか否かを目的として、子宮頸部前癌病変患者を対象群として解析を行った。(方法)解析症例は前癌病変および健常人の200名で、年齢平均値は36歳(幅:21歳ー50歳)、細胞診、組織診が判明し、腟培養、およびHPV型判定が行われている。(結果)クリニチップHPVによるHPV感染が144例、陰性は56名であった。腟内培養検査で乳酸菌(L.)陽性は148名、陰性は52名、G.vaginalis(GV)陽性は65名であった。1)L.とGVの出現率2)HPV感染と嫌気性菌出現率には差が認められなかった。一方、3)HPV感染とGV出現率には正の相関がみられた(P=0.02)。上記検体から解析が可能であった132例を対象としてL.と細菌性腟症関連菌(G.vaginalis, Atopobium vaginae, Mobiluncus curtisii)を標的として定量的Reverse Transcriptase-PCRを行った。その結果、乳酸菌亜株としてL. iners, L. criptatus, L.gassri, L.jhonseniiの中ではL.crispatusと細菌性腟症関連菌の中ではGVに優位な負の相関が認められた。腟内サイトカイン・ケモカイン発現の網羅的解析では高濃度のIL-1β(p=0.003) とIL-8(p=0.001)は高度細胞診異常と相関した。高度細胞診異常のないグループにおいて高濃度のIL-8(p=0.036)とMIP-1β(p=0.032)はハイリスクHPV型感染と関連した。(結論)L.の亜株とGVに相関が見られ、HPV感染とGV出現率には正の相関がみられたことから腟内細菌叢の乱れと前癌病変にはなんらかの相関があり、サイトカイン、ケモカインの発現が関与している可能性が考えられた。
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