研究課題
(背景)腟内に嫌気性菌が異常増殖した場合、プトレシン、カダベリン、トリメチルアミンなどのアミン化合物が嫌気性菌により産生され、ニトロソアミンなどの変異原物質に変換され、子宮頸癌発生機構に関与している可能性がある。本研究では、(1)これら一連のアミン化合物を含め、子宮頸部前癌病変患者の腟内分泌物中に存在する低分子物質を網羅的に解析するとともに、これらの化学成分が腟内分泌物の臭気成分として関与していることから腟内分泌物の臭気を簡易的に計測するニオイセンサの開発を行っている。(方法)子宮頸部前癌病変患者の腟内分泌物中に存在する低分子物質を網羅的に解析するため、GC/MSによる分析方法を検討している。GC/MSではプトレシン、カダベリン、トリメチルアミンなどのアミン化合物を直接測定する事は難しく、誘導体化等の前処理が必要となる。そこで、誘導体化試薬1,1,1-trifluoroacetylacetone(TFAA)を用いてこれらアミンの誘導体化条件を検討した。一方、子宮頸部前癌病変患者の腟内分泌物中に存在する低分子物質に起因する臭気を簡易的に計測するニオイセンサシステムの開発では、ニオイセンサとして安価で耐久性に優れた酸化物半導体素子を使用し、沸点が低い低分子物質の臭気を解析できるようシステム開発を行っている。(結果)GC/MSでアミン化合物を測定するため、アミン標準試料としてプトレシンを用いTFAAを用いて誘導体化条件の検討を行った。プトレシンおよびTFAAのモル濃度比率が1 : 4、95 ℃、15分加熱、室温まで冷却した後、プトレシン誘導体を窒素気流下で乾固させた。GC/MS分析には、このプトレシン誘導体乾固物にエタノールを加えて溶解したものを試料とした。この結果、GC/MSのよりプトレシンのMSスペクトルが観測された。
2: おおむね順調に進展している
本研究では下記に示す4つの計画から構成されている。1.子宮頸部前癌病変患者における腟内細菌叢の分析2.子宮頸部前癌病変患者における局所免疫応答の解析3.腟内分泌物から検出されるアミン化合物および低分子物質の探索4.ニオイセンサの臨床応用をめざした基礎的検討。1,2については前年度に行い、解析中である。予備的結果から、腟内細菌叢が産生する分子が前癌病変に対しなんらかの影響を与えていると考えられた。その原因追求のためには3.について遂行する意義があると考え、現在、MS解析の予備実験を行っている。これらの解析結果を臨床現場へ応用するために新しい機器を開発することを模索しており、4.について準備を進めている。これまで沸点が低い低分子物質の臭気を解析できるニオイセンサシステムなかったので、その開発を行った。ここでは、システム内に試料を配置する試料ホルダーにサーモモジュールを使用し、試料温度を低温(-10℃)から高温まで制御できるシステムとした。この結果、ニオイ測定開始直後は、試料温度を低温に保ち低沸点成分の揮散を抑制し、その後、試料温度を順次上昇することで低沸点成分の臭気を分離して計測できることが可能となった。今後、子宮頸部前癌病変患者の腟内分泌物の低沸点成分の臭気を解析し、健常者との比較検討を行っていく。
MS解析にあたり、セットアップに時間がかかっているが、研究は概ね順調に進んでおり、今後も研究分担者と継続的に連絡を蜜にとりながら研究を遂行していく。
MSにかかる消耗品費用とニオイセンサの改良に費用をかける。そのほか、局所免疫応答が子宮頸癌培養細胞に及ぼす効果を解析するために培養細胞実験にかかわる試薬に費用を充当する。未使用額の発生は効率的な物品調達を行った結果であり、翌年度の消耗品購入に充てる予定である。
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