研究概要 |
子宮頸部前癌病変を中心とする婦人科患者から腟内分泌物を採取し腟内細菌と子宮頸部局所免疫応答の分析を行い、発癌との関連を解析した。さらに、腟内に発現している分子を「においセンサ」で分析し、「においセンサ」の臨床応用の可能性についても検討した。定量的Reverse Transrcriptase PCR法により、A.VaginaeとG.Vaginalisの感染はHPVの多重感染化に伴い優位に増加する傾向を示し、CINと細菌性腟症の関連が示唆された。一方、頸管粘液に含まれるサイトカインの中でIL-1bとIL-8は高悪性度扁平上皮内病変の患者で強く発現していることが判明した。MIP-1bは低悪性度扁平上皮内病変の患者の中でHPV16,18,31,33,35,45,52,58型感染陽性例において発現が低下していることも判明した。一方、「においセンサ」を用い臨床検体(n=101)の解析を行ったところ、「におい」のパターンを多変量解析にて10クラスターに分類することができた。現在のところ各クラスターと患者臨床情報との相関を解析中である。 HPV多重感染が観察される患者では腟内細菌叢の乱れが生じていた。これは活動的な性行動の結果なのか、免疫など他の要因により引き起こされた結果なのかは明らかでない。サイトカイン発現パターンは正常と細胞診異常患者では異なることも判明し、局所免疫が前がん病変形成に何らかの役割を果たしていることが示唆された。腟内には多数の分子が存在し、その相互作用を解明することは癌化機構を解明する上で重要と考えている。腟分泌物を物理工学的に分析し、その結果を用いた臨床応用が可能か否かを検討中である。
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