研究概要 |
本研究では、癌間質の由来の一つとされる骨髄由来間葉系幹細胞(MSC)に着目し、間質細胞と免疫細胞、癌細胞の三者の相互作用を分子・細胞レベルで解析し、癌微少環境における間質細胞の意義を腫瘍免疫学的見地から解明することを目的とする。本年度はがん微小環境中のMSCを単離するためのマウスモデルを二つ考案し作製を試みた。一つ目のモデルでは、まず、GFPマウスより骨髄MSC (PDGFRα+, Sca1+)を、野生型マウスより骨髄細胞を採取し、野生型マウスに骨髄移植しMSC由来の細胞のみがGFPで標識されたキメラマウスを作製した。このマウスにマウス卵巣がん細胞を皮下移植したところ、2-3週間後に腫瘍局所にGFP陽性細胞を認めた。このことから、骨髄由来のMSCが癌局所に移動していることが分かった。二つ目のモデルでは、まず、マウス癌細胞株にdsRED遺伝子を導入し、癌細胞を蛍光で標識した。この腫瘍をGFPマウスに皮下移植し、腫瘍組織内のGFP+, dsRED-, CD45-, TER119-, PDGFRα+, Sca1+細胞を腫瘍浸潤MSCとして単離することを試みた。この際MSCを染色する抗体の蛍光標識の様々な組み合わせを検討した結果、APC-Cy7標識-抗CD45抗体、APC-Cy7標識-抗TER119抗体、PC-7標識-抗Sca1抗体、APC標識-抗PDGFRα抗体で染色することにより、腫瘍組織内よりPDGFRα+, Sca1+細胞を単離、培養する事に成功した。このモデルにより、腫瘍組織内の間質にも骨髄でのMSCと同様のマーカーで染色される細胞集団が存在することが証明された。今後、これら二つのマウスモデルを用いて、がん局所のMSCの遺伝子プロファイルを網羅的に解析し、性質を解明、がんの悪性形質にどのように影響を与えるかを解析する。
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