研究課題/領域番号 |
23592466
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
平澤 猛 東海大学, 医学部, 講師 (70307289)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 婦人科腫瘍学 / 低酸素環境 / 癌の微小環境 / 明細胞腺癌 / TypeII 体癌 |
研究概要 |
【目標】平成23年度においては、子宮体癌TypeII(漿液性・明細胞腺癌)[以下TypeII体癌とする]におけるmTOR-HIFシグナル関連因子の発現について解析を行い、子宮体部に発生する本組織型の特徴をmRNAおよびタンパクレベルでの発現解析し、本組織型におけるHIFシグナル伝達経路の全容を解明することを目的に研究を展開してきた。【材料】当院においてインフォームドコンセントが得られ、根治を目的に外科的に切除されたTypeII体癌(漿液性腺癌:17例、明細胞腺癌:10例)を用いた。【方法】mTOR-HIF関連因子(mTOR,p-mTOR, HIF-1α)について免疫組織化学酵素抗体法による発現解析を行ってきた。【結果】TypeII体癌において、全例で種々の程度のp-mTOR、HIF-1αの発現を認めた。とりわけ明細胞腺癌で高い傾向を認めたが、両組織型間での有意な差は認められなかった。また、これらの因子の発現と予後との相関についても解析を行ったところ、p-mTOR、HIF-1の高発現と予後の間に明らかな相関は認められなかった。【考察】これらのことから、mTOR-HIF関連因子の発現は、漿液性腺癌・明細胞腺癌の両組織型間での発現の差が認められないことから、これらの因子は、組織型に依存した発現パターンをとらず個々の症例によって、発現に差があることが示唆された。一方でこれまでの上皮性卵巣癌における漿液性腺癌・明細胞腺癌におけるこれらの因子の発現は組織型で差が認められたことから、子宮体部に発生するものと卵巣に発生するものは同じ組織型でもその発現因子には大きな違いがあることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度では、RT-PCRによるmRNAの解析ならびに各組織検体からの核分画からのHIF-1転写活性の解析ができなかった。これは、mRNAならびに核分画抽出に必要な新鮮な患者検体を採取できなかったことから、次年度においてもインフォームドコンセントの得られた症例より採取された場合は、本解析を遂行する予定である。また一部予算の残額はその他解析を終了できたことから、残額を次年度の消耗品の購入に繰り越した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度においては、in vitroにおけるmTOR-HIF-1シグナル伝達経路抑制によるTypeII体癌治療への基礎的解析を行う。in vitroの試験で用いる薬剤に関してはすでに準備が完了していることから、前年度の残額を含め、in vitro試験で使用する消耗品を使用して、TypeII体癌由来の培養細胞株での、mTOR阻害剤単剤での抗腫瘍効果ならびに本シグナルへ与える影響を解析する。併せて、mTOR阻害剤単独での効果に付随し、現状使用している化学療法薬とのcombinationによる細胞への抗腫瘍効果についても検討する。in vitroでの抗腫瘍効果が認められた場合は、速やかにin vivoにおいて同効果について試験を行う。in vivo試験でもin vitroで用いたcell lineを中心に研究を展開していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
主に細胞培養ならびに細胞の保存等に必要な消耗品の購入、また新たなcell lineの入手にかかわる費用、薬剤の追加購入も行う予定である。併せて、シグナルへ与える影響、細胞増殖抑制効果の検出に必要な試薬、抗体などの消耗品の購入、また補助員の謝金も支出を予定している。in vitro assayでの結果を踏まえ、in vivo studyが可能であると判断された場合には早い段階でのcell line移植用のヌードマウス等の購入を行うのとともに、購入時より発生する飼育管理費にも予算を費やす予定である。また前年度の残額はin vitro試験での消耗品購入に充てる。
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