研究課題/領域番号 |
23592466
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
平澤 猛 東海大学, 医学部, 講師 (70307289)
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キーワード | 低酸素環境 / 癌の微小環境 / 明細胞腺癌 |
研究概要 |
目的:これまでに我々は卵巣明細胞腺癌でmTOR-HIF pathwayが特異的に亢進しており、この系の活性化が予後不良の一因であることを報告してきている。さらにmTOR阻害剤はこの系の活性化を抑制するばかりでなく様々な側面から抗腫瘍効果を有しており、明細胞腺癌治療への応用が期待されている。そこで、本研究ではType Iに比して予後不良であるType II体癌に主眼をおき、mTOR-HIF 関連因子の動態について検討した。 材料・方法:当科においてインフォームドコンセントの得られた子宮体癌48例(類内膜腺癌(TEMA):21例 、漿液性腺癌(TSEA):17例、明細胞腺癌(TCCA):10例を用いてmTOR-HIF 関連因子について免疫組織化学を施行し、臨床病理学的解析を行った。 結果:Type II体癌の全例で種々の程度のphospho-mTOR(p-mTOR)、HIF-1α、HDAC7の発現を認めた。とりわけ明細胞腺癌で高い傾向を認めたが有意な差は認められなかった。HDAC7の発現はheterogeneityな染色態度を示し、TSEA,TCCAともに細胞質に発現を認めたが、TCCAの1例では唯一、核・細胞質の両者に発現を認めた。 考察:今回の検討から、Type II体癌においては組織型の差に関わらず全例でmTOR-HIF pathwayの亢進が認められたことから、mTORの活性化がType II体癌の予後不良因子の一因であることが考えられた。また、HIF-1αが細胞質・核陽性でHDAC7強陽性症例は予後不良であったことから、予後因子としての可能性については、現在継続して検討を行っている。さらにin vitro、in vivoにおけるmTOR-HIF-1シグナル伝達経路抑制によるType II体癌治療の可能性についても検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実績概要にもあるように、既に組織検体を使用した臨床病理学的解析については概ね実験を終了しているが、『in vitro におけるmTOR-HIF-1シグナル伝達経路抑制によるType II体癌治療への基礎的解析』についてはType II体癌の細胞株樹立に時間を要したために大きく遅延している。しかし、24年度中には細胞株の樹立を完了し、現在in vitroにおけるトライアルを遂行中である。併せて、本成果をもとにin vivoにおける薬剤効果判定についても25年度中に終了させるよう現在調整を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は主に『in vitro におけるmTOR-HIF-1シグナル伝達経路抑制によるType II体癌治療への基礎的解析』を中心に24年度に樹立したType II体癌細胞株を用いて、in vitro 腫瘍細胞増殖における薬剤評価、in vitro におけるHIF-1αおよびHIF-1 関連因子の発現抑制効果の検討を行い、創薬に結び付けたいと考えている。さらにin vivoにおいても皮下移植腫瘍を用いて薬剤効果判定も行い、国内外に成果を発表できるように努力する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究の達成度にもあるとおり、24年度では、Type II体癌培養株の樹立に大きく時間を費やしてしまったことから、次のステップへなかなか進めず、使用できなかった残高を25年度に繰り越している。
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