研究課題
本研究は、卵巣癌のなかでも難治性な明細胞腺癌の治療法の開発を目指して、明細胞腺癌の遺伝子背景とHB-EGFとの関連を明らかにし、HB-EGFの標的分子としての意義を検証することを目的とする。本年度は、まず、HB-EGFの標的分子としての意義を検証するために卵巣明細胞腺癌細胞株を用いてHB-EGFと他のEGFRリガンドの発現量をrealtime PCRとELISAにて測定した。その中で、HB-EGFのみが発現が亢進している細胞株とHB-EGFとともに他のEGFRリガンドも亢進している細胞株を同定した。その細胞株に、HB-EGFの中和抗体を使用すると細胞培養上清中のHB-EGFの発現が抑制され細胞増殖活性が抑制された。したがって、卵巣明細胞腺癌においてHB-EGFは標的分子となりうることが証明された。次に、HB-EGFは、三次元増殖に必須の分子で、抗癌剤や標的治療薬の投与によりHB-EGFの発現を亢進させて薬剤への耐性示す。この特性を利用して、2次元培養条件下の細胞とマトリゲルを用いた3次元培養条件下の細胞、NOD/SCID マウス上で形成された腫瘍から抽出したRNAを比較して、3つのアレイシステム(発現アレイ、microRNAアレイ、CGHアレイ)を利用しHB-EGF発現に関わる遺伝子の探索を行った。発現アレイの結果からHB-EGFの発現亢進とともに血管新生に関わる遺伝子群や転写因子のなかでも転写開始前複合体形成に関与する遺伝子群が亢進していることが示された。これらの遺伝子群の発現は卵巣明細胞癌の予後と関連し、HB-EGFの発現と相関していた。以上の成果より、HB-EGFの発現に関与する遺伝子分子が絞り込まれた。来年度以降は残り2つのアレイを用いてさらにHB-EGFの発現に関わる遺伝子の抽出を行い、最終的には抽出された遺伝子の標的分子としての可能性を検証していく。
2: おおむね順調に進展している
卵巣明細胞腺癌においてHB-EGFが標的分子となりうることが証明された。更には発現アレイを用いたHB-EGF発現調節に関わる遺伝子群や転写因子の同定まで現在遂行できている。
現在、アレイシステム(発現アレイ、microRNAアレイ、CGHアレイ)の中で、microRNAアレイとCGHアレイによる解析を行っており、その中で、HB-EGFの発現に関わる遺伝子背景及びHB-EGF発現亢進により増加する分子の探索を行う予定としている。更には、卵巣癌組織を用いて、探索されたHB-EGFと関連のある遺伝子の発現の比較検討を行う。
アレイシステム(発現アレイ、microRNAアレイ、CGHアレイ)の解析を行っており、解析の結果、HB-EGFの発現に関わる遺伝子背景及びHB-EGFの発現更新により増加する分子の探索を行う。その結果、HB-EGFと関連のある遺伝子の発現の比較検討をrealtimePCR、ELISAやアレイシステムを用いて、発現の比較検討を行うために使用する予定である。
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Clinical cancer research
巻: 17 ページ: 6733-6741
Anticancer research
巻: 31 ページ: 2553-2559