研究課題/領域番号 |
23592473
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小山 眞 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10465487)
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研究分担者 |
和田 仁 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30111264)
村越 道生 東北大学, 大学院・工学研究科, 助教 (70570901)
小林 俊光 東北大学, 大学院・工学研究科, 教授 (80133958)
宇佐美 真一 信州大学, 医学部, 教授 (10184996)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 耳科学 / 遺伝性難聴 / ペンドリン / Pendrin / タンパク質機能回復 |
研究概要 |
Pendrinは内耳に発現する膜タンパク質であり,遺伝子変異により難聴になることが知られている.我々の研究室では,サリチル酸やその誘導体がPendrin変異体の機能を回復させることを発見した.このことは,遺伝性難聴の治療の可能性を示唆している.しかし,その機能回復メカニズムは不明である.そこで,本研究では,Pendrin変異体の細胞膜移行過程を追い,Pendrin変異体の機能回復メカニズムの解明を目指している.このメカニズムが明らかになれば,遺伝性難聴治療のための薬剤の効果的投与方法および効果的時期を決定できる.以前の研究により,日本人で報告されている10種類の変異Pendrinのうち,H723Rの変異を持った患者が最も多く,このH723R変異体は細胞内に蓄積されることが明らかとなっている.また,このH723R変異体は,サリチル酸により細胞内から細胞膜に移行することがわかっており,細胞膜に移行すればイオン交換能を獲得し,野生型と同様に機能することも確認されている.本研究において,変異体H723Rを発現させたHEK293細胞に,サリチル酸およびサリチル酸と分子構造が類似した2種類のサリチル酸誘導体(サリゲニン,2,3-ジヒドロキシ安息香酸)を投与し,1,3,6,12時間後のH723R変異体の細胞内局在を蛍光免疫染色法を用いて解析しところ,サリチル酸およびサリゲニンが,3~6時間で変異体の細胞膜への移行を促進する事が確認できた.このことから,遺伝性難聴治療のための薬剤の効果的時期を決定することができた.また,この結果から,今後は,薬剤投与後3~6時間でのタンパク質の細胞内経時変化を顕微鏡用培養装置を用いて追跡し,薬剤投与により細胞内のどの場所から変化が起こるかを観察することで,機能回復を形成している場所の解明を目指す.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2011年3月11日に発生した東日本大震災および関連する余震によって,実験設備,試薬等に多大な被害を受けた.早期復旧に取り組んできたものの,長期の停電により冷蔵・冷凍保存していた試薬等は使用できなくなったため,実験の実施が遅れている状況である.
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今後の研究の推進方策 |
顕微鏡用培養装置を用い,時間経過とともに変異タンパク質がどのように移行するかを観察し,機能回復を形成している場所を特定する.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は,当初計画していたBCEFCの活性測定の実験ができなかったため,次年度以降に延期することによって発生した未使用額と平成24年度請求額をあわせ,次年度に計画している研究の遂行に使用する予定である.
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