代表的な抗脂血症治療薬にはHMG-CoA還元酵素阻害剤であるスタチンと胆汁酸の排泄促進作用をもつプロブコールがある。両者は抗コレステロール効果の作用機序は異なるが神経保護作用を有することが知られており、本研究ではアミノグリコシド系抗生剤によって惹起される内耳有毛細胞障害に対する抑制効果を検討した。実験計画中にスタチンについたは他の研究者により内耳障害予防の効果があることが論文に発表されたため、対象をプロブコールのみにしぼった。実験動物はICRマウスの生後3~4日目新生児を用い断頭後蝸牛を採取し器官培養系で評価を行った。24時間前培養し培養メッシュに蝸牛を接着させた。内耳有毛細胞障害を惹起する薬剤としてゲンタマイシンを用い、過去の報告を参考にして外有毛細胞の約50%の障害を誘発する濃度として0.3mMを用い24時間培養した。プロブコールも過去の報告を参考にして1μM、10μM、100μM、1mMの濃度系列で効果を検討した。実験群としては対照群、ゲンタマイシン群、ゲンタマイシン+プロブコール群(4群)の計6群となった。培養24時間後にパラホルムアルデヒド固定、0.2.%Triton X-100による浸透化処理後rhodamine phalloidinによる有毛細胞の染色、cleaved caspase-3抗体による免疫染色を行い有毛細胞の残存率とアポトーシスの誘発の程度を評価した。ゲンタマイシン群と比較してプロブコール群では容量依存的に有毛細胞残存率の上昇、アポトーシス誘導の低下を認めた。これらのことよりプロブコールにはアミノグリコシド系抗生剤によって惹起される内耳有毛細胞障害を抑制し内耳保護効果があることが分かった。
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