研究課題/領域番号 |
23592477
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
岩崎 聡 信州大学, 医学部附属病院, 教授 (00232653)
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研究分担者 |
茂木 英明 信州大学, 医学部, 助教 (60422698)
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キーワード | 先天CMV感染症 / 難聴 |
研究概要 |
先天性CMV感染症のマススクリーニングのための診断方法としてFTAカードを使用した検査方法を検討した。FTAカードを用いた場合の感度、特異度を調べるため、陽性コントロール検体と陰性コントロール検体を用いて検討した。ガスリー検査で採取した血液試料をFTAカードに滴下し、20分以上乾燥させた後に1.2mm径の血液スポットをくりぬき、FTA wash bufferで洗浄後CMVのコードする遺伝子のうち保存性の高いUS14遺伝子上のプローブを用いて定量PCR解析した。その結果、陽性コントロールでは同一サンプルの12回計測で10回の検出であり、感度は83%であった。擬陽性は36検体中1検体のみであり、特異度は97%であった。したがって、FTAカードを使用する場合,偽陰性となる可能性が15%程度あるため、4重測定を行うこととした。実際にFTAカードを用いたCMVスクリーニング検査を31例に対して実施したところ、1例で陽性がみられた。FTAカードを使用した先天性CMV感染の分子遺伝学的診断法はマススクリーニングとしては有用な方法と考えられたが定量性が低いため、陽性例に対しては保存臍帯による確認が必要と思われた。 また、稀ではあるが、CMV抗体を保持する妊婦であっても先天性CMV感染児が生まれる事がある。この原因としてCMVの再活性化および異なるCMV株への再感染が言われている。保存臍帯を用いてCMV陽性となった症例を対象に、抗原部位として報告されているglycoprotein B領域をPCR法により増幅し直接シークエンス法により塩基配列を調べた。その結果、本邦におけるCMV株は大きく2種類に大別された。海外も含めてCMVは4株あることが報告されている。今回の8検体の検討で、タイプ1が3例、タイプ3が5例認められ、再感染の可能性があることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度までに確立したTaq Man法を用いた定量Real-Time PCR法による検出系を用いたFTAカード検体による先天性CMV感染症のマス・スクリーニング法としての診断法の確立を目指し検討を行うとともに、その感度・特異度を明らかにすることができた。また、実際に開発した測定系を用いて31例を対象に解析を行ったところ1例の先天CMV感染症を見出すことができ、次年度以降の研究の継続により更なる成果が期待できる状況である。また、前年度までに保存臍帯を用いて行った検討により、CMV陽性となった症例を対象に抗原部位として報告されているglycoprotein B領域をPCR法により増幅し直接シークエンス法により塩基配列を調べた結果、本邦におけるCMV株は大きく2種類に大別されることが明らかとなった。今後再感染の可能性などについて検討するための基盤が整った状況であり、次年度以降陽性検体の配列を決定することでより詳細な検討が可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度確立したFTAカードを用いたスクリーニング系を用いて先天性CMV感染症の検討を行うとともに、スクリーニング検査により陽性となった検体に対しては、保存臍帯を用いた定量解析をおこなうことで、CMVのコピー数と臨床像の相関解析を行う。また、感染症発症の予知や抗ウイルス剤投与中止の指標として利用するためのCMVmRNA測定法の確立と検証を行っていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
FTAカードを用いたスクリーニングを実施するために必要なFTAカード、TaqMan Probe、Real Time PCR試薬などを購入する。またmRNAの定量のために必要なcDNA合成試薬を購入する計画である。
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