本研究では、先天性CMV感染症のマススクリーニングのための診断方法としてFTAカードを使用した検査方法を開発した。FTAカードを用いた場合の感度、特異度を調べるため、陽性コントロール検体と陰性コントロール検体を用いて検討を行った。その結果、陽性コントロールでは同一サンプルの12回計測で10回の検出であり、感度は83%であった。擬陽性は36検体中1検体のみであり、特異度は97%であった。したがって、FTAカードを使用する場合,偽陰性となる可能性が15%程度あるため、感度を向上させるために4重測定を行う方法に変更を行った。実際にFTAカードを用いたCMVスクリーニング検査を200例に対して実施したところ、1例で陽性がみられた。FTAカードを使用した先天性CMV感染の分子遺伝学的診断法はマススクリーニングとしては有用な方法と考えられた。しかし、FTAカードを利用した場合には定量性が低いため、陽性例に対しては保存臍帯による確認が必要と思われた。 また、稀ではあるが、CMV抗体を保持する妊婦であっても先天性CMV感染児が生まれる事がある。この原因としてCMVの再活性化および異なるCMV株への再感染が言われている。保存臍帯を用いてCMV陽性となった症例を対象に、抗原部位として報告されているglycoprotein B領域をPCR法により増幅し直接シークエンス法により塩基配列を調べた。その結果、本邦におけるCMV株は大きく2種類に大別された。海外も含めてCMVは4株あることが報告されている。今回の8検体の検討で、タイプ1が3例、タイプ3が5例認められ、再感染の可能性があることが示された。
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