研究課題/領域番号 |
23592478
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
工 穣 信州大学, 医学部, 准教授 (70312501)
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研究分担者 |
宇佐美 真一 信州大学, 医学部, 教授 (10184996)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 前庭 / 遺伝子発現 / 微少重力 / DNAマイクロアレイ |
研究概要 |
STS-129(90日間滞在, n=3),STS-131(15日間滞在, n=16)のマウス、およびそれぞれに対する地上コントロールマウスから摘出された前庭(平衡斑・半規管・前庭神経節)および蝸牛サンプルよりRNAを抽出後、クオリティチェックを行い、マイクロアレイ(Agilent社 Gene sprint 3G, 62976遺伝子)による網羅的発現解析を行った。 まず全体的な発現プロファイリングを90日間滞在群と15日間滞在群で比較してみたところ、前庭および蝸牛とも15日間滞在群に対して90日間滞在群では発現のバラツキが小さく、長期に微小重力環境下に滞在することによって新しい重力環境に適応してきている様子がうかがえた。 続いて地上コントロール群と90日間滞在群の前庭における遺伝子発現を比較検討したところ、GABA関連遺伝子、骨代謝関連遺伝子、DNAダメージ修復遺伝子などの424遺伝子について2倍以上の発現増加を認める一方で、カルシウム結合蛋白などの306遺伝子について1/2以下の発現減少を認めた。また興味深いことに、これら遺伝子群について15日間滞在群の発現を検討したところ、90日間滞在群で発現増加していたものは発現が減少し、90日間滞在群で発現減少していたものは発現が増加している事が明らかとなった。また、熱ストレス応答蛋白遺伝子の発現は15日間滞在群で地上群の約3倍にまで達していたが、90日間滞在群ではその半分程度まで発現が減少していた。ここからも、長期滞在による微小重力環境への適応の様子がうかがえる。 さらにこれらの発現増加・減少している遺伝子群について、Taq-Man probeを用いたreal-time PCRにて定量的発現比較解析を行ったところ、マイクロアレイで認められた発現量変化とほぼ同等の発現量変化であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画当初に予定していたDNAマイクロアレイの解析を実施できた。今後局在の確認を行い内耳における機能の推定などにより前庭機能におよぼす微小重力の影響が明らかにされると期待される。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までに同定された、微小重力空間に滞在したマウスの前庭で遺伝子発現量が2倍以上変化した遺伝子のうち、構造タンパク質だと考えられるものに関しては蛍光免疫染色により前庭における局在の解析を行う。また、併せて蝸牛での染色も行いその局在の比較検討を行う事で、宇宙良いに関与する遺伝子群の同定後の機能推定を進める計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
微小重力空間に滞在したマウスの前庭で遺伝子発現量が2倍以上変化した構造タンパク質の前庭における局在の解析を行う計画であるため、抗体や蛍光を付加した2次抗体を購入する。また、TaqMan法で遺伝子発現量の指定量を行うとともに、DNAマイクロアレイ解析を追加して、発現量の少ない遺伝子の変化に関しても検討を行う。
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