研究課題/領域番号 |
23592478
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
工 穣 信州大学, 医学部, 准教授 (70312501)
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研究分担者 |
宇佐美 真一 信州大学, 医学部, 教授 (10184996)
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キーワード | 前庭 / 微小重力 / 遺伝子発現 |
研究概要 |
スペースシャトルプログラムSTS-129(90日間滞在, n=3),STS-131(15日間滞在, n=16)に搭乗したマウスおよびそれぞれに対する地上コントロールマウスより、前庭(平衡斑・半規管・前庭神経節)および蝸牛を摘出し、DNAマイクロアレイにより網羅的発現解析を行い、90日間滞在群と15日間滞在群で発現が大きく異なる遺伝子についてreal-time PCRにて定量的発現比較解析を行った。内因性遺伝子であるActBの変化が乏しいにもかかわらず、カルシウム結合タンパクであるS100a8,9や耳石タンパクであるOc90などは90日間滞在群で大幅に発現減少しており、長期の微小重力環境滞在による耳石代謝の変化を表していると思われた。また、熱ストレス応答蛋白遺伝子のHspb7の発現は15日間滞在群で地上群の約3倍にまで達していたが、90日間滞在群ではその半分程度まで発現が減少しており、長期滞在を経て微小重力環境へ適応しストレスが軽減している様子がうかがえた。一方、15日間滞在群で発現が大きく減少していたGabra2は、90日間滞在群で5倍以上に増加していた。長期の微小重力環境滞在によって慢性化した前庭系へのシグナル入力減少を補うため、Gabra2の発現を増加させることで神経活動を増強している可能性があると思われた。またこのことは、Ross MD(2000)によって報告された、微小重力環境滞在による末梢前庭系の1次神経終末シナプス増加と深く関係すると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、スペースシャトルプログラムSTS-129(90日間滞在, n=3),STS-131(15日間滞在, n=16)に搭乗したマウスおよびそ地上コントロールマウスより前庭(平衡斑・半規管・前庭神経節)を摘出し、DNAマイクロアレイにより網羅的発現解析を行うとともにreal-time PCRにて定量的発現比較解析を行い遺伝子発現の変化を網羅的に解析することができた。特に、微小重力環境下において、カルシウム結合タンパクであるS100a8,9や耳石タンパクであるOc90などの発現に2つのフェーズがあることが明らかとなるなど、従来予測しなかった新たな知見が得られており、今後の検討により更なる成果が期待できる状況である。
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今後の研究の推進方策 |
マイクロアレイの結果、微小重力環境下で遺伝子発現が大きく変化した遺伝子群が同定されたが、その中には内耳における発現部位が明確になっていない遺伝子も多数存在するため、in situ Hybridization法および組織免疫染色法により内耳における発現部位を同定するとともに、その機能的な意義を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
マイクロアレイの結果、微小重力環境下で遺伝子発現が大きく変化した遺伝子群の遺伝子発現を確認するために必要なリアルタイムPCR用のプローブ、内耳における遺伝子発現部位を確認するために必要なin situ hybridizationに必要なプローブおよび試薬類、組織免疫染色に必要な抗体等を購入する計画である。
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