研究概要 |
【研究目的】感音性難聴には、先天性難聴、あるいは加齢性難聴、騒音性難聴などが含まれ、遺伝的要因あるいは騒音等の環境ストレスが関わっていると考えられている。我々は、神経堤細胞の制御遺伝子、EdnrBを標的にワーデンベルグ症候群モデルマウスの先天性難聴を改善出来る事を示してきた(Ida-Eto, Ohgami, Sone et al., JBC 2011)。一方、ポリフェノール系の抗酸化物質であるレスベラトロール(Resv)は、線虫などを用いた研究で延命効果を示す事が報告されている(Wood et al., Nature 2004)。また、ResvはEdnrBのリガンドであるendothelinsの発現制御作用がある事が報告されている(Zou et al., Int J Oncol 1999)。このような背景から、抗酸化能も持つResv投与により、EdnrBを標的に加齢性難聴を予防出来る可能性がある。そこで、本研究は、Resvの抗がん作用を検討した過去の報告に従って(Brakenhielm FASEB J 2001)、Resv(25 μM)を野生型マウス(C57/BL6系統等)に3~6ヶ月間飲水投与し、加齢性難聴に対する効果を検討した。 【結果】Resv投与群(n=10)は、非投与群(n=10)と比較して、加齢性難聴に有意な予防効果は示さなかった。また、ニッスル染色、透過電子顕微鏡、免疫組織染色等により内耳の形態解析を実施した所、加齢に応じて観察される非投与群のラセン神経節の変性について、Resv投与群は予防効果を示さなかった。 【今後の検討課題】飲水投与によるResvの加齢性難聴の予防効果を検討したが、期待した結果は得られなかった。今後、内耳器官培養系等でResvや他の候補化合物の効果を検討しつつ、投与方法の最適化の検討も進めたい。
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