研究課題/領域番号 |
23592481
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
戎 富美 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (70596197)
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研究分担者 |
中川 隆之 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (50335270)
田浦 晶子 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70515345)
山本 典生 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70378644)
北尻 真一郎 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00532970)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 内耳有毛細胞作製 / マウスES細胞 / 内耳前駆細胞 / Myosin7a陽性細胞 / 高効率化 / Wntシグナル / ヒトiPS細胞 / 臨床応用 |
研究概要 |
2010年に大島らによる初のマウス幹細胞由来の内耳有毛細胞が作製された。本研究はグループの実験方法に残存する問題点を解析、改善し臨床応用に向けて有毛細胞作製の高効率化を図ることを目的としている。初年度はマウスを用いて、ES細胞から内耳前駆細胞そして内耳前駆細胞から最終プロダクトである成熟した内耳有毛細胞への分化誘導の高効率化を図るために必要な因子を同定することを目標とした。まずES細胞から内耳前駆細胞作製においてはグループの方法を用いて内耳前駆細胞の作製することが出来た。さらにIGF1とEGFを導入することにより有毛細胞マーカーであるMyosin7a陽性細胞への分化誘導に成功した。内耳前駆細胞から成熟した内耳有毛細胞の作製においては、大島らは幹細胞由来の内耳前駆細胞をニワトリの内耳組織上で培養し有毛細胞への分化誘導を施行したが、我々は幹細胞由来の内耳前駆細胞をつかう代わりに内耳前駆細胞を含む妊娠10日目のマウスの耳胞を用いて培養しニワトリの内耳組織の有毛細胞作製における役割を確認することにした。その際ゼラチン上で培養した耳胞をコントロールとしたが、我々の予想に反し耳胞をゼラチン上で培養した時のほうがより多くの成熟した有毛細胞への分化をみることが出来た。この結果は妊娠10日目の耳胞にはすでに有毛細胞作製に必須な因子が内在しているということ、さらにニワトリの内耳組織は有毛細胞への分化を抑制する因子を発現している可能性があるということを示唆している。耳胞での発現パターンとその機能(primary ciliogenesis)からWntとShhを候補シグナルとし内耳有毛細胞発生におけるそれぞれの役割を解析した結果、Wntシグナルが有毛細胞作製に関与していることを解明した。さらにニワトリの内耳組織はWntシグナルを抑制する因子が発現されていることもRNAレベルではあるが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
まずES細胞から内耳前駆細胞への分化誘導においては、前述したようにグループの方法を用いてPax2陽性内耳前駆細胞を作製することが出来た。またIGF1とEGFを導入することにより有毛細胞マーカーであるMyosin7a陽性細胞を作製することが出来た。 しかし両者ともその分化誘導率は低く実験結果においても一貫性に欠ける。また内耳前駆細胞から成熟した有毛細胞への分化誘導においてはマウスを用いて内耳有毛細胞に関与しているシグナルを同定することが出来たが、そのシグナルのみで十分なのかどうかはまだ検討中である。さらにこのシグナルの内耳有毛細胞におけるメカニズム・ターゲット因子が解明できていない。
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今後の研究の推進方策 |
まずES 細胞由来の内耳前駆細胞またはMyosin7a陽性細胞への分化誘導率の向上を目指す。誘導率を上げるためにさらなる因子が必要なのか、実験条件を改めなければいけないのか等を引き続き検討していきたい。さらに内耳前駆細胞またはMyosin7a陽性細胞から成熟した有毛細胞の作製においては、Wntシグナルのみで充分なのか、さらなるシグナルが必要かを解析していきたい。 そして最終的にはマウスで得た情報をヒトiPS細胞に応用し、ヒトiPS細胞から成熟した有毛細胞への分化誘導を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.試薬:マウス細胞およびヒト細胞の培養培地、発現タンパク解析用(50万円)2.消耗品:マウス細胞およびヒト細胞の培養培地、発現タンパク解析用(50万円)3.施設使用料:電子顕微鏡など(10万円)4.論文投稿料(20万円)5.学会参加: 国内学会(20万円)及び国際学会(35万円)
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